第52χ まっすぐな愛を君にA




やってきたは中庭。どうやら食後はまったり1人で読書をするのが彼女の日課なようだ。これも変た...少年による情報収集の賜物だ。

「ちょっとついて来ないで下さいよ!」

こっちに来る前、少年について来るなと言われたのだが、彼のことがどうしても信じられずに私と楠雄くんは彼についてきてしまった。それに告白の現場なんて見たことないから少しワクワクしている。

「ついてきたのなら仕方無いっス。せっかくだから見せてやりますよ。オレの新能力をね!」

能力...?話の流れからして彼にはある能力が備わっていることはわかっていたけど。それで彼女の個人情報を全て調べ上げたというわけか。うん、やっぱり彼をしっかりと監視しておかなければ。板野さんは私が護る!

彼はまるでサ○ヤ人がスーパー○イヤ人にでもなろうかという格好で集中力を高めていけば、そこには今まで見続けてきたへたれな彼とは違う雰囲気を纏った彼の姿があった。

「これで○KBも抱けるってわけさ...!」

言葉の意味をイマイチ理解できていないが、これが彼の能力である口寄せというものらしい。口寄せとは、死者の霊を自分に憑依させて霊に成り変わることができることができる術なのだが...つまりは彼は霊に関わる能力、さしずめ霊能力者と言ったところだろう。
ちなみに彼が憑依させたのは元ナンバーワンホストであり、生粋の女ったらしとのこと。本当に大丈夫なのだろうか...この先不安で仕方ない。

そんなこんなで彼は彼女の元へ行ってしまった。私達は板野さんに見つからないよう木の陰に隠れてそっと様子を見守る。
途中まではうまくいっていたように見えたけれど、返ってきたのは彼女の強烈な張り手。トボトボとこちらに戻ってきた彼の頬にはくっきり紅葉が付いていた。

「まだ諦めるのは早いっスよ。実はもう1人呼んでるんスよ。」

強烈なビンタで目が覚めたと思っていたのは大間違いだったようだ。彼が次に自信満々に連れてきたのが、平凡な学生...のようだ。勿論、私には第六感はないからその学生がどのような風貌かは想像するしかない。
しかしながら、平凡な学生がどのように関係しているのだろうか。答えを鳥束くんに聞いても良かったのだが、ここは聞かずに彼を見守ることにした。
ちなみに霊能力者の名前が鳥束くんということは板野さんのおかげでわかった。ありがとう!

そんなこんなで2回目の告白タイム。
今回の憑依先程のとは異なって既に成功の兆しを見せているような気がする。板野さんの頬がほんのり染まっていて...まるであの表情は恋する乙女だ。もしかしたら次はいけるかもしれない。

「良かったー!もうずっと口を利いてもらえないかと思った。僕、依子ちゃんにだけは嫌われたくないからさ。」

...今、少しキュンとした。自分のことではないけれど、あの言い方は反則だと思う。彼がなぜ平凡な学生を連れてきたのか何となくわかった気がする。彼は見事なまでの策士だ。
この調子でいけば見事成就するだろうとそのまま見守っていれば、案の定鳥束くんはドジをやらかしてもう片方の頬に真っ赤な紅葉が出来上がっていた。
そりゃ事故であっても、乙女の大事な胸を鷲掴んだら怒るよ。
これがラブコメのお約束...Nice Boat。

板野さんが去って行ったのを確認すると、地面に横たわったままの彼にそっと手を伸ばす。これ以上、惨めな彼の姿は見たくないし、能力を使ったとはいえ、勇気のいる告白をしようとした姿勢は評価に値すると思う。
鳥束くんは私の手に掴まるとゆっくり身体を起こして不思議そうに顔を見上げてくる。

「無理に自分を作らなくても鳥束くんは、鳥束くんらしくいたらいいと思うよ。その方が似合ってと私は思う。それに、相手に幻を見せてまで好きになってもらっても、結局最後は鳥束くん1人が辛くなっちゃうよ。」

当たり障りのないことを言ったつもりなのに、鳥束くんの目と鼻から大量の体液が溢れ出す。
まったく...彼はまるで幼い子供のようで世話を焼かずにはいられなくなってしまう。私はしゃがみこむと取り出しハンカチで涙を拭ってやる。

「ほら、泣かないで...せっかくの顔台無しだよ。」
「うぅ...女の子でオレにこんなに優しくしてくれたのは仁子ちゃんが初めてっス...。」

弱々しい彼の声が聞こえてきたと思えば、私は彼に強く抱き締められていた。

「オレ、仁子ちゃんが好きになっちゃったみたいっス...!」

な...ななな、なんですとー!!





*まえ つぎ#
もどる
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -