第55χ 運命のドローくじ!@




「なぁ、向こうって暑いよな?」
「楽しみすぎて昨日眠れなかったわー。」

今日のクラスは浮き足立った会話が目立っていて、いつにも増して賑やかに感じる。それはある出来事が近づいてきているからだ。
その出来事というのが、高校生活のメインイベントの1つである修学旅行だ。今年の修学旅行は沖縄で、その日は来週とすぐ近くまできていた。

私も今回は御多分に洩れず浮かれている。普段はインドア派の私も、旅行は好きな方だからだ。旅行の日を待ちわびているときの高揚感が何とも言えず好きだ。勿論、旅行中の普段の環境では感じられない温度感や文化の違いを楽しむことも好きだけれど。

今日のLHRは修学旅行でグループ行動をする班を決める日になっている。私はファストフード店からの帰り道に知予ちゃんと照橋さんと一緒に行動する約束をしているので、私は安心して自席で読書をしている。一応女子3人、男子3人の6人班の構成になるが、そこに関しては知予ちゃんと照橋さんが必死なので彼女たちに一任している。

ふとちらりと横を見れば、いつものように楠雄くんがぼんやりと座っている。最近、クラスの席替えがあり偶然にも楠雄くんの隣を勝ち取ることができた。
そんな特権を利用して灰呂くんとの会話を聞き耳立てたところ、楠雄くんは安定の海藤くんと燃堂くんと班を組むらしい。
私の予想していた通りだ。予想をしていたと言うよりかは、あの3人は3人でいてこそだと思っている。他の誰かなんて考えられない。

「楠雄くんのところは相変わらずだね。」

小説の文章を目で追いながら楠雄くんに話しかければ、分かりきっていたと言うように頷く。

「女子はどこと組むか決まってる?」

それのなく聞いてみれば、首を横に振って答えてくれる。男子の班がようやく決まったのに女子の班なんて考えているわけがない。わかっていたことだがホッとしている自分がいた。

「運良く一緒に回れたら良いね。やっぱり見知った面子の方が少しばかり楽だし。」

楠雄くんは少し考え込むように俯くと躊躇いがちに首を振ってみせる。首を振る原因はおおよそ見当はついている。
彼がちらりと視線を向けた先には照橋さんが知予ちゃんと楽しそうに話していた。私と同じ班になると言うことは照橋さんと同じ班になるということ。人の視線を嫌と言うくらい集めてしまう彼女の側には居たくないと言うことだろう。少し残念だけれど仕方がない。
けど、楠雄くんは少し渋ったように首を振っていた。彼を悩ませたのは一体何だったのだろうか。...そこは正直、気になる。

「仁子、ちょっとこっち!」

知予ちゃんに呼ばれて重い腰をあげて席を立つと廊下に出る。廊下に出るなり、知予ちゃんと照橋さんに片腕ずつホールドされてしまった。何が起こるのかと身を強張らせていれば2人してニンマリと怪しげな笑みが浮かんでいる。

「仁子、今斉木くんと何か話してたでしょ?」
「斉木、同じ班になるって?」

その問いに首を振って答えると、残念そうに肩を落とす2人。罪悪感ものすごいのだけれど、悪いのは私じゃないんだからね!むしろ罪なのは照橋さんのマドンナっぷりだと思う。そんなこと口が裂けても言うつもりはないのだけれど。





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