第95χ C-HEROS VALETUDO BATTLE@




3月19日 晴れ

今日も普段と変わらぬ日常。
部屋の掃除をし終えて、残りの時間は私だけのもの。今日はどんな本を読もうかなと本棚の前で悩んでいると、珍しく我が家のチャイムが鳴り響いた。

「はーい、どちら様ですか?」
「おーっす。これから相棒のうちに行くから一緒に行こうぜー。」

まさかの来客...もとい、遊びの誘いだ。
そこにいたのは燃堂くん、海藤くん、窪谷須くん。彼らが私の家に顔出すなんて珍しい。今日は何か特別なことがあったのか思考を巡らせるも思い当たる節はまるでない。

私も用事があるわけでもない...が、一緒に行く理由もない。ここは面倒だし断ってしまおうかと理由を考えるも、彼らは私が行く前提で話を進めているようで、スタスタと向かいの楠雄くんの家へ行ってしまう。致し方なく私は両親に出かける旨を伝えると慌てて彼らを追いかけた。

燃堂くんが楠雄くんのうちのチャイムを鳴らす。出てきたのは当然楠雄くん。勿論、その顔には歓迎するという様子はまったくなく、きっと私と同じ心境だろうなと容易に察することができた。

「悪いな突然。」
「おっじゃましま〜す。」

彼らは楠雄くんの許可もなくズカズカと上がり込んで行く。突然来るのも悪いし、邪魔だと思うなら行かなければいい...彼らにとってその言葉は社交辞令に過ぎないのだろうけど。

「...ごめんね、突然。迷惑ならすぐ帰るからっ。」

私はどうして良いかわからず、扉に手を掛けて帰ろうとすれば、彼はもう仕方ないと言うかのように首を緩く振ってくれた。どうやらお邪魔してもいいらしい。3人来たのなら4人いても変わらないということだろう。

靴を脱いで家に上がると丁度宅配が来たようで、楠雄くんが荷物を受け取っていた。開ける様子を背後まで見ていれば、彼の手には一本のゲームソフト。

「Cヒーローズバーリトゥードバトルだよ。」

いつの間にか玄関におじさんが来て、ゲームソフトについて説明してくれた。
Cヒーローズバーリトゥードバトルとは、おじさんが務める週刊少年コニャック創刊2周年記念として発売される、連載作品のキャラで行う格闘ゲームのようだ。そして楠雄くんが今手にしているのはサンプル品だという。

創刊2周年でゲームを作るなんて随分思い切った社長さんだと思う。週間少年コニャックなんて聞いたことないし。...というよりかは、オールスターズって某週刊誌でも創刊何十周記念として発売するってテレビで見たことあるような、ないような...。

みんなはコニャックのことをよくよく知っているようで興奮が隠しきれない様子。こういうところに男子と女子の違いを感じて少しばかり寂しく感じてしまう。

このあとなんやかんや盛り上がって、Cヒーローズバーリトゥードバトルをやらせてもらえることになった。

早速、ゲーム機本体のある楠雄くんの部屋へ。
これまでこの家にはお邪魔していたけれど、楠雄くんの部屋に入るのは初めてかもしれない。迷惑にならないかと思いながらも部屋を見渡してしまう。部屋は最低限のものだけが置かれており、彼らしさがよくよく窺える。

「これ2対2の格闘ゲームだからチーム分けしようぜ。5人いるから負けた奴が待ちのやつと交代な。

「私は格闘ゲーム苦手だからまずは観戦するよ。」

邪魔にならないようみんなの背後に腰を下ろして、プレイする様子を眺める。テレビ画面はキャラ選択画面になっており見たこともないキャラが軒を連ねている。
否、1人だけは見たことある。オッドアイ・ペルソナ・ケルベロス...通称オッペケだ。以前JFに楠雄くんと行った時に海藤くんがコスプレしていたキャラクターだ。いつコニャックに移籍したのだろうか。

そんなことを考えていると画面はバトル画面に切り替わっていた。この格闘ゲームは複数人でやるだけあって、4画面に分割されておりフィールドも縦横自由に移動できるようだ。私の知っている格闘ゲームより更に進化していることに驚きと感慨深さを感じてしまう。

みんな初めての操作だというのにお互いがぶつかり合って中々のいい勝負をしている。私じゃコマンドを理解するだけでも30分は欲しいくらいなのに。
それぞれし烈な攻防があったが最後に残ったのは楠雄くんが操る三太郎。窪谷須くんと海藤くんの2人がかりだったのに見事に技を決めて見せたのだ。

「...ま...負けた...」
「途中からまるで考えが読まれてるかのように裏をかかれまくったぜ...」

まったくその通りで、あの展開で見事に勝ち残るのは相当格闘ゲームをやり込んでいなければできないテクニックだ。そんなにも楠雄くんがゲーム好きだったなんて思いもよらなかった。

「さて、決着ついたし次交代な。」
「...私?うまくできるかな。手加減、よろしくね。」
「どんな相手でも手加減しねぇのが格闘ゲームだろうが」

この後、日が暮れるまでメチャクチャみんなとゲームした。




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