ねぇねぇと瞳輝かせて追い討ちをかけるようにやってくる質問責めにどう返そうか、思考回路がショート寸前になるまで考えていれば、不意に隣から飛んでくるストローの包み。
「おーわりー、そっちいっちまった。」
包みを飛ばしてきた犯人は燃堂くんだった。燃堂くんがいるということは恐らく彼もいるのだろう。
2人も慌てて立ち上がるとどうやら見つけてしまったようだ。一瞬にして顔が赤くなっている。
そこにはいつもと変わらぬ楠雄くんがいた。
「オレの誘い断っておいて平凡もこんなところにいたのかよ。おめーら女子会か?」
「まぁ...そんなところかな。」
女子会に混ざろうとでも言うのか、ぞろぞろと2人して歩み寄ってくる。そりゃマドンナ照橋さんもいるわけだし、むさ苦しい集まりよりそっちの輪に入りたいのだろう。楠雄くんはいつものように距離をとった感じだけれど。
「うわっと!!」
「きゃっ!!」
歩み寄ってきたところで床に僅かに段差があったのか、海藤くんは躓くと目の前にいた知予ちゃんと接触してしまった。幸い怪我はなかったようだけど...あれ?知予ちゃんの顔が真っ赤になっている。
「おお、ワリィ!!」
「きゃっ!!」
今度は燃堂くんも躓いて照橋さんにぶつかってしまった。何だか今のはすごく白々しい感じだけれど...照橋さんの顔もびっくりするくらい赤くなっている。一体何が起こったのかわからなくなってきた。
私はとりあえず楠雄くんの方に避難する...べ、別に私にも楠雄くんとぶつかりたいなんて思ってはいない、断じてっ!そもそも楠雄くんが何もないところで転ぶほどおっちょこちょいには見えないし。
違和感があったはその場面のみで、暫し6人で賑やかに雑談した後に、店を出る。
心なしか気まずそうにしていた知予ちゃんと照橋さんが仲よさそうに話している。きっとお互いに安心を得られた結果なのだろう。
「いいな...恋する乙女って」
ついうっかり呟いてしまった。慌てて口を塞ぐも、前の4人は聞こえなかったようだけれど、微かに楠雄くんが反応した気がする。もしかしたら聞こえなかったかもしれない。まぁ、聞こえていたとしても楠雄くんが好きだってことが伝わったわけじゃないし問題はないのだけれど。
明日は修学旅行の班決めがある。帰りに神社でこっそりお参りしに行こう。勿論、お願い事は楠雄くんと一緒の班になれますように。