第92χ 劇団!Ad Libitum(前編)B




「あーそういえば、配役ってどうなってんだ?」
「そう言えば忘れてた。そこも適役考えてきてあるから、ちょっと待って!」

この配役も劇にとって重要なことだ。配役のミスをすれば、たちまち台無しになってしまうのが演劇の恐ろしいところであると思う。
私は窪谷須くんの質問に、あらかじめ用意しておいたフリップを取り出すと配役を提示した。

平凡:桃太郎
窪谷須:おばあさん、鬼
鳥束:猿、キジ、犬
斉木:おじいさん

「うっわ、オレ鬼かよ。面倒くせぇな。」
「ストーップ!!明らかにオレの方が面倒臭いじゃないっスか!無理っスよ!」
「...そう、かな?なんとか衣装とかで誤魔化せたりできると思ったんだけど。」

私としたことがうっかりしていた。窪谷須くんの配役は2人同時に出ることがないから何も問題ないけれど、鳥束くんのは流石に無理がある。徹夜してまで考えていたから、その影響が出たのかもしれない。

「3匹は流石のオレも降霊したって無理っスよ!いっそ3匹分に匹敵するやつオレが考えるっス!」
「それじゃ桃太郎の世界観が壊れそうで怖いけど...そこはアレンジだと思えばいいかな。」

代案は思い付かないし、彼にも何か案がある様だからお供に関しては鳥束くんを全面的に信頼して一任することになった。まさか明日のお楽しみなんてできるなんて思わなかったから、鳥束クオリティだとしても少しワクワクしてしまう。

「仁子ちゃんは主役で出る時間が長いから一役でいいとして、斉木さんだけおじいさんだけっていいっスよねー。」
「気持ちはわかるけど、配役に関してこれ以上異議は認めないからね。」

そんなの当たり前だ。おじいさんは浮浪人である桃太郎を受け入れるだけではなく、愛情で包み込む重要なポジションだ。そんな大役ができるのは私を除いては彼しかいない。

「物語もできて配役も決まったからあとは...衣装かな。舞台は美術部に任せればいいし。」
「...仁子ちゃんも顔に似合わず中々の鬼っスね。」

鳥束くんの言葉を華麗にスルーして、衣装の調達手段を考えることにする。
この学校には家庭科部は残念ながら存在しないため、舞台のように依頼して作成してもらうことはかなわない。かといって舞台の衣装を購入するにしても、想定金額の倍は覚悟した方がいいだろう。...そうとなったらこれしかない。

「各自で用意でいいんじゃないかな。」
「ちょ...クオリティは保証できねぇぞ!」
「できないじゃなくやるんだよ、窪谷須くん。なんせ部の生存がかかってるんだから。」

バンッと文句を垂れるばかりで非協力的な窪谷須くんの机に台本を叩きつければ、大人しくなってくれた。文句を言うなら代案の一つや二つ欲しいものだ、まったく。

「これで準備はバッチリだね。さぁ時間もないんだから読み合わせ始めよう。」

果たしてこの演劇は成功するのか。
そして部の存続の危機は打開できるのか!?
後半へ続く...。

To be continued...




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