第90χ 拍手喝ψ?!カラオケ大会!@




「盛り上がっていくぞォォー!!」

現在のテンションは最高潮である。
それに反比例して私のテンションは落ち込んで行ゆくばかり。

今日はクラスのみんなとカラオケに来ている。
3学期がもうすぐ終わるため、思い出づくりにとクラス会の名目で企画されたようだ。

私はカラオケにはまったくと言っていいほど興味がない。歌ってストレス発散できるなら人間苦労はないのだ。
何か口実をつけて欠席する予定だったけれど、知予ちゃんの楽しみでたまらないというキラキラとした瞳に負けて渋々参加している。

来たはいいが何をしていいかわからない。
カラオケに来たからには歌うことが主目的であるのだが、前も述べたようにカラオケには興味ないし、そもそもそんな気分ではないのだ。

先日の小旅行。結局最後は楠雄くんと気不味い雰囲気になってしまい、家に到着するまで一言も言葉を交わすことがなかった。
あの後、どう彼と接するべきなのか。考えても上手い言葉が見つからない。
こんな状況、私は望んだわけじゃない。あの時言葉を飲み込んでおけばよかった。そうじゃなければ今頃もう少しクラス会を楽しめただろうに。

しかし、いつまでも一人暗い顔をしていては、みんなの興も削げるというもの。暗い表情のままでは、みんなに失礼だ。
少しでも気を紛らわせようと用意された飲み物を啜りながら周りを見回す。みんな奇声を上げたり、踊り出したり本当に楽しそうだ。

「仁子、何歌おうか迷っちゃうね!」
「私は歌えないけど知予ちゃんの十八番が聞ければ今日は満足だよ。」

知予ちゃんは隣でリモコンで操作しながら何しようかとペンを走らせている。やだもう、なんて声色でどれだけテンション高いのか容易に想像つく。彼女もまた普通の女子高校生なのだ。

そんな知予ちゃんを横目に再びぼんやりと辺りを見回すと、いつもの3人が目に留まった。海藤くんと燃堂くんはわかるとして...楠雄くんまで珍しい。何が彼をカラオケに駆り立てたのだろうか。

「きたー!照橋さーん!!」
「はぁ〜照橋さんの歌が聴けると思ったらなんか泣けてきたよ...」
「マイク越しの声も美しい...うっ...涙が...」

歌う順番が照橋さんの番になったらしい。みんなの歓声が三倍増しくらいになった気がする。端の方ではすでに号泣する男子がチラホラ。歌う前から感極まりすぎではないか。このテンションだと感受性も高まるらしい。

そして照端さんがいよいよ歌い出すと男女問わず、涙を流して聴き入っている。確かに声は綺麗だし歌唱法も言うことはない、しかし今の私には残念ながらその歌は響かない。歌詞がもう少し良ければきっと届いたはずなのにな...。

「うおお!照橋さんスンゲー上手ェェー!!!」
「98点!!こんな点数初めて見た!!」

照橋さんがみんなから賞賛を受ける中、ひっそりと熱唱するのは海藤くん。彼も歌はかなり上手い方だと思う。歌詞も照橋さんに負けず劣らずなところも悪くない。...けれど、順番が悪かった。

照橋さんの後じゃなきゃもっと注目されていただろうに。海藤くんは歌い終わるとしょんぼりした様子で席に戻って行く。
私はちゃんと君の歌声を聴いていたよ。ナイスブラッディ...私は彼の勇敢な様にひっそりと小さく拍手を送った。





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