※光源氏計画(コレ)の続き。
※6歳と14歳→16歳と24歳




10年越しの愛をあげる





『リュウ、元気ですか?…って、覚えてるかな?リュウが小さい頃よく一緒に遊んでた、基山ヒロトです。もうすぐそっちに帰ることになったので、帰ってきた時にはまたよろしくね。』







朝一番、朝刊を取ろうとして郵便受けを覗くと、新聞の他に明らかに外国から送られてきたであろうハガキが一枚入っていた。しかも私宛てに。

差出人は基山ヒロト。
たしか、昔近所に住んでたお兄ちゃん。母親同士仲が良いこともあって、よく面倒を見てもらっていた気がする。
小学校に上がるか上がらないか位の時の話なので記憶も曖昧で、顔もよく思い出せないけど、綺麗な赤い髪と深い翠色の瞳だけは今でもはっきりと思い出せる。
幼いながらも鮮やかな赤と、不思議な色をした翠に心を奪われていたのかもしれない。

母親に聞いてみれば、当時の私はその「ヒロト兄ちゃん」が大好きで、よく後ろにくっついていたらしい。
彼についての記憶が曖昧なのは、きっと彼が受験勉強で忙しくなってしまって会えなくなったのと、中学校を卒業してすぐに外国へと引っ越してしまったからだと思う。
お母さんがいくら昔の私と彼がラブラブだったのかを話して聞かせても、私自身は記憶がないのでどうもしっくりこない。


「昔は結婚するとか言ってたのにねぇ…」

そう言って笑うお母さんの横顔を私は疑問符を浮かべて、見つめることしかできなかった。



結婚……、ねぇ。
今私は16歳で高校一年生。
法律上では結婚できる歳でもある。
母親の言葉を思い出して、そんな約束もしていたのか…なんて他人事に感じながら「行ってきます」と言って家を出た。






いつもの通学路をいつものペースで歩く。

ふと、横を見るとそこは小さな公園。
昔よく大夢と遊んだ公園だ。

あの頃は幼稚園でおままごとが流行ってて、よく一緒にやってたなぁ…。懐かしい……。
そういえばここの公園でヒロト兄ちゃんとも遊んだ気がする。
当時ヒロト兄ちゃんは中学生だったのに、ちゃんと私のおままごとに付き合ってくれてたんだよね。
………あ、なんか色々思い出してきたかも。



思い出に浸りながら公園の砂場や滑り台を見ていると、ブランコのところに誰かが座っているのが見えた。
こんなに朝早くから公園に人がいるのも珍しい。
俯いていて顔は見えないけど、眩しいくらいに鮮やかな赤色の髪。

「……もしかして、」


心臓が、ドクンと脈打った気がした。
まさか。ついさっき自分が思い浮べてた人物がいきなり目の前に現れる訳ない。手紙だって今日見たんだよ?そんなに早く来れる訳……っ!



頭の中では否定しながらも足は完全に公園へと向かっていた。
無意識の内に早足になってブランコに座っている人物の元に行くと、漸くその人物は顔を上げた。



鮮やかな赤髪に深い翠の瞳。
髪の色は同じだけど昔みたいにストンと下りた髪型じゃなくてサイドの髪が外ハネになってるし、翠の瞳は驚きのためか見開かれている。
とにかく、私が記憶していた彼の印象全てが当てはまったのだ。




「…ヒロト、……兄ちゃん…?」

「…………っ、リュウ…!?」


ポツリと思わず呟けば、相手は見開いていた目を細めて、にっこりと笑った。



……と思ったら、


がばり。

いきなりブランコから立ち上がったヒロト兄ちゃんは手を広げて私をぎゅっと抱き締めたのだ。


「…会いたかったぁ……!」

「…へっ!!?ええええええええ!!???」

さすが外国帰りとあって、いきなりハグ。
これ、きっと向こうじゃ挨拶代わりなんだよね?すごいなぁ…。


……じゃなくって!!

「…あ、あの!ほ…ほんとにヒロト兄ちゃんなの……?」

「うん、そうだよ。いやぁ、リュウが覚えてくれてたなんて嬉しいな」


そうニコニコ顔で答えるヒロト兄ちゃんは本当に昔と変わっていなくてすごく安心する。
加えてヒロト兄ちゃんは、所謂イケメンと呼ばれる部類で、相変わらず格好良い。
もういい歳だし、外国で素敵なお姉さんとお付き合いしてるんだろうな……。

……あ、もしかして今回こっちに戻ってきたのだって、その彼女さんとの結婚を報告するためなんじゃ……?


「それにしてもヒロト兄ちゃん、こんなところにいていいの?」

「……?どういうこと?」

「だって日本に戻ってきたってことは、何かあるんだよね…?……例えば、『結婚』とか……」

「……!」



ヒロト兄ちゃんの驚いた顔にはまるで「どうして分かったの!?」とでも書いてあるようだった。
私はその分かりやす過ぎる反応に少し笑う。
あー…、でもちょっと残念だな。

なんてったって、ヒロト兄ちゃんは私が最初に好きになった人だったから。それに、10年経ってもヒロト兄ちゃんを見るとドキドキするんだよね…。
これって、まだヒロト兄ちゃんの事好きってことなのかな?




私が悶々と考えて意識を飛ばしていると、目の前のヒロト兄ちゃんは一度深呼吸をして私の目を捕えると、肩を掴んでこう告げた。



「リュウ、俺と結婚しよ?」

「………へ?」

「昔、約束したよね?今回こっちに戻って来たのもリュウとの約束果たそうと思って来たんだ」


ぱち、ぱち、ぱち。
まばたきを3回。

私の瞳に映る男の人は今何て言った?
リュウ?リュウってわたし??
約束?結婚??


…いくら何でも急過ぎるでしょ!!?



『昔は結婚するとか言ってたのにねぇ…』

不意に今朝言ってた母親の言葉が蘇る。


「…ちょっ、ちょっと待って……!結婚って……、その…わ、わたしまだ学生…だし、ってか、そもそもヒロト兄ちゃんと私って付き合ってもないし…!」

「そっか…リュウは覚えてないのか……。昔の俺にあんな事しておいてさ。あれは付き合ってるも同然だったなー」

「…なっ!あ、あんな事!?」


あ…あんな事って、何…!?
ヒロト兄ちゃんと遊んでたのは確か私が6歳の頃だったから……えーと、えーと………。

困り果てて顔を上げると、眉毛をハの字に下げながら笑うヒロト兄ちゃん。

「それに、結婚しようって言い出したのはリュウ、お前だよ?」

「……っ!!?」








『……わたしね、ヒロトにーちゃんだいすきだから、おおきくなったら、けっこんしよーね!』


ヒロト兄ちゃんの視線を真っ直ぐに受けて、私の曖昧な記憶が漸くはっきりとしてきた。




………そうだ。
私、ヒロト兄ちゃんの事が大好きでいつも家に来てくれるのを楽しみにしてて…。
おままごとしてる時に、『結婚しよーね』とか、そんな事を言って、しまったような気が………。


「…え、じゃあヒロト兄ちゃんは私の昔の一言をずっと覚えてて……?」

「……あ、もしかして思い出してくれた?まさか8歳も年下の子にプロポーズされるとは思わなかったな」


昔の恥ずかしい思い出を暴露されて顔が熱くなる。
プロポーズ、って…!
…いや、まぁ確かにそうだけど!あれは場の雰囲気というかなんというか!!



「まぁ10年も前の事だし、リュウが忘れてても無理ないか」

「…あ、いや……その」


慌てて首を振るとヒロト兄ちゃんは安心したように顔を綻ばせる。
…ああ、もう!だからその顔に私弱いんだって!!


「……じゃあ、俺の事まだ好き?」

「す、すき………!」


条件反射的に、つい言ってしまった答えを取り消すには遅すぎて。
ヒロト兄ちゃんの顔はますます緩むばかりだ。
そして、そのまるで人形のように整った口が新たに言葉を紡ぐ。



「……あ、でもリュウはまだ学生だしいきなり結婚なんて無理だよね?とりあえず、学校終わったらリュウのご両親に挨拶しに行こうか?あと、住むところは後々決めようね」

「………………。」





本日2度目の衝撃発言に、私は登校時間が過ぎていることも忘れて再び絶叫したのだった。








end


――――――――――

楓さま、長らくお待たせして本当に申し訳ありませんでした…!
リクエストのHGP(光源氏プロジェクト)の続きです。

年の差カップルいいですよねぇぇぇ!!!///
私も年の差カップル大好物ですwww
本当は基山くんに10年グッと我慢させようかと思ったのですが、たぶんアイツは10年我慢できないだろwwwと思ってちょっと外国へ旅立っていただきました^o^
勝手に外国へ行くという設定にしてすみません…!
リュウちゃんの方も記憶が曖昧な感じで……^^;

なんだか、楓さまのリクエストしてくださった内容に添えているのか不安なのですが、愛を込めて、楓さまに捧げます。
もちろん、返品可能ですので!いつでも言い付けてやってください〜^^


では、この度はフリリク企画にご参加してくださってありがとうございました!





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