※炬燵=こたつ
※お日さま園の構造を捏造しまくりでごめんなさい…!
寒い冬には随分とお世話になった、炬燵。
最近は暖かい日が続き、そろそろ炬燵と別れなければならないなぁ…、なんて思っていたら。
数日後、冬に逆戻りしたような寒さがオレの身体に凍みわたる。
『三寒四温』だなんて昔の人は本当にうまいこと言ったもんだよなぁ。
とりあえず今日の寒さがあと数日続くのだと思うと、現在進行形で使用中の炬燵はまだ片付けられない。
「ううぅ………寒い」
手をこすりあわせて暖を取り、炬燵の布団を上へと手繰り寄せる。
ここはお日さま園の談話室。
テレビがあって、ソファーもあって、ついでに簡易キッチンと冷蔵庫もある、居間と台所を合体させたような部屋だ。
お正月、クリスマス。
園での大きな行事はだいたいこの談話室で行われることが多く、普段もみんながよく集まる場所でもあった。さらに冬の間だけ姿を現す炬燵。
オレ達に与えられている部屋には炬燵なんて置く場所ないから、実質お日さま園に炬燵はここの談話室にしかないということになる。
…だから、自然とみんなここに集まって来るんだけど、今はオレ一人。
……なんでかって?
それはたぶん時刻のせい。
昨日夕食を食べてからうっかり寝てしまったせいで、夜中の2時というなんとも微妙な時間に目が冴えたのだ。
なんとなしに談話室へと顔を覗かせてみたけど案の定部屋の中は誰一人いなかった。
…そして冒頭へ戻る訳でありまして。
炬燵のスイッチを入れて、テレビを消音でつけてみるけど、さすがに夜中じゃロクな番組もやっていない。高いのか安いのか、得なのか損なのかよく分からない通販番組をぼんやりと見続ける。
炬燵によってポカポカと暖まった身体に全く見る気のないテレビ番組。
こんな、眠りの世界にはもってこいのシチュエーションなのに、やっぱり眠気はやってこない。
遂にオレは一言、ポロリと零した。
「あー……、暇…」
「やっほ、緑川」
「……ッ!!!???」
「え、そんなに驚く?」
いやいや、驚くだろ普通。
ついさっきまでこの部屋に一人きりだと思ってたのに、オレ以外の奴の…ヒロトの、声が聞こえたら誰だって驚くよ…!
「な、なんでヒロトがここに…!」
「たまたまトイレの帰りに覗いたらさ、談話室に明かりが付いてたから。消し忘れかと思って」
パジャマ姿でにっこりと笑顔を貼りつけているヒロトを見て、思わずため息が漏れる。
そしていそいそと炬燵に入っているオレの隣を陣取るとごろりと寝転がってしまった。
…ちょ、狭いよ?ヒロトさん??他に寝転がる場所いくらでもあるよね?四角い炬燵の足がオレの太股に食い込んで痛いんですけど!
「えっ…と、ヒロト?なんでオレの隣来るの?狭い上に痛いんですけど」
「…いいじゃないか。緑川も寝転がりなよ。一緒に寝よう?」
「……っ!!いやいやいや!!!なんでそうなるんだよ!寝るなら自分の部屋に行って寝ればいいだろぉ!?」
なんだ?今日のこのヒロトのふわふわした感じ。
…もしかして、寝呆けてる??
いや、正確には寝転んだことによって眠気が倍増されて、おやすみ3秒前、ってところだ。
「ヒ、ヒロトぉ!こんなとこで寝たら風邪引くぞ!!起きて部屋行けって!!」
「うぅ…、ん……みどりかわ、暖かいし、風邪なんて引かないよ…?」
寝転がってるヒロトに下から微笑まれてオレの心臓が高鳴る。…と同時に、急に腕を引かれて強制的にオレも寝転がる形にされてしまった。
寝呆けてるはずなのにどこからこんな力が出てくるんだ…!?
「……おおーい、ヒロト?」
呼び掛けても全く反応しない。
間近に映る、ヒロトの寝顔。
オレの肩を上から腕で押さえつけて、抱き込むようにしたまま彼は深い眠りへと落ちてしまったようだ。
うんともすんとも言わずにただ寝息を立てているだけのヒロトをじっと見つめる。
「…この、イケメンめ!」
全く崩れない整った顔に少々腹が立ってヒロトの鼻をつまむ。
鼻をつまんでもやっぱりイケメンなのには変わらなかったけど、「ふがっ!?」と言ってびっくりしていたので良しとする。
そして俺も炬燵の布団に肩まで潜ってぽそりと呟いた。
もうちょっとだけ、こうしてて
翌朝、目を覚ますと隣にいたはずのヒロトの姿はなくなっていて代わりに瞳子姉さんの仁王立ちしている姿。
……オレが電気とテレビ、及び炬燵の付けっぱなしの罪で瞳子姉さんにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。
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