※ちゅっちゅしてます注意。
ぼんやりと映る視界には見慣れたオレの部屋の天井。
意識が段々はっきりしてくると共にひどい寒気が全身を襲った。
ああ……そういえば。
オレは練習中に気分が悪くなって昼ご飯もろくに食べず、ベッドで今まで眠りこけていたのだった。
窓の外を見ると明るかったはずの景色もいつのまにか闇に包まれていて、時計の針は既に数字の7を指していた。
長時間寝たのにも関わらず、一向に収まらない寒気と戦いながら、オレは今日の夕飯なんだろうな…なんてあまり食欲も無いのに、そんな呑気なことを考える。
寒いはずなのに身体はぽかぽかと暖かく、熱過ぎるほどだ。
とにかく、喉が渇いたな…。
けれど動くのも億劫で、今立ち上がったら確実に倒れる自信があった。
これはやばいな……。
頭クラクラする…。
予想を上回る体調の悪さに、誰か看病してくれないかなぁ…なんて都合の良い事を思った正にその時。
タイミング良く鳴り響いた自室のドアの音。
その後聞こえてきたのは、心配そうな声でこちらの様子を伺うヒロトの声だった。
「緑川、調子はどう…?」
ガチャリと扉を少し開けて、顔を覗かせる彼の手には、オレが丁度欲しいと思っていたスポーツドリンクが握られていて、ついベッドからがばりと起き上がってしまった。
「ヒロ…ト、ポカリくれ…!」
「そんな焦らなくても大丈夫だよ。お前にあげるために持って来たんだから」
急に起き上がった身体は当然クラクラと揺れて再びベッドにダイブする。
目を瞑ると若干気分が良くなったけど、頭がクラクラする感覚はまだ抜けない。
そうこうしている内にヒロトがベッド近くに近寄ったのが分かったので漸く目を開く。
「目瞑ったままでもよかったのに」
「それじゃポカリ飲めないだろ」
「勿論俺が飲ませてあげたよ?口移しで」
「お断りします」
ヒロトと冗談を交わしつつ、水分で喉を潤す。
もちろんコップに注いで、自分で飲んだ。
渇いた喉に水分がしみ込んでいく感じが心地よく、少しだけ熱が下がった気がした。
「それで?熱はどれくらいあるの?」
「…へ?」
ポカリを飲み終えて再びベッドに横になったオレはすぐにでも夢の世界へと旅立つ予定だったのに、ヒロトはまるで母親のようにあれやこれやと世話をしてくれた。
現在オレのおでこに貼ってある熱冷まシートもヒロトが持参した物だ。
しかし、さすがに体温計までは持ってきてなかったらしい。
たぶん、オレが自分で測っているだろいと思っていたようだが、生憎オレの部屋に体温計という物は置いていなかった。
「…もしかして、測ってないの!?」
「だってオレの部屋、体温計ないし」
しんどくて体温測るどころじゃなかったんだよ…、と薄目を開けてヒロトに訴えてみるも、当の本人はさも信じられないというようにこちらを見ている。
「大丈夫だよ!寝たら治るから!!もー…オレ眠いから寝るよ…?」
事実、今にも瞼が閉まりそうなのを懸命に我慢していたら、ヒロトは慌てたように何か言って、オレの唇とヒロトのそれとをくっつけた。
「…んんっ!??」
突然の事に夢心地だったオレの脳は覚醒し、目を見開く。視界には目を閉じたヒロトの顔がアップで飛び込んできて、思わず再びぎゅっと目を瞑る。
熱と酸素不足のせいで、視界が涙でぼやけてきた。くっそう…ばかヒロト…!なんでこんな時に…!!
酸素を取り込もうと僅かに口に隙間を作れば、待ってましたとばかりにねじ込まれるヒロトの舌。
「ちょ、ヒロ…っ!…っふ、んむっ…!」
いつもより熱い口内を執拗に舌で舐め回され、漸く解放された時には口の回りはどちらのとも分からない涎でベタベタだった。
「…っ、はぁ……、い、今ので絶対、熱上がったし」
「緑川、相当熱あるね…。お前の舌の温度から言って……38度7分くらいかな。まだ熱上がってるみたいだし、安静にね」
「……は、…え?ヒロト、まさかい、今ので熱測ってた…のか…??」
「……え?うん、そうだけど?緑川寝ちゃいそうだったし、早く測らなきゃと思って」
「……………」
……なんだかなぁ…。
オレは今、とてつもなく目の前の男が新型インフルエンザにかかって苦しんでくれないかなぁ…と心底思っています。
睡魔との戦いも限界に近づき、意識を手放す間際に見たヒロトはとても爽やかな顔で「おやすみ緑川。早く良くなってね」なんて言っていた。…気がする。
熱よりもあつい
ああ、もう神様!!
あいつにオレの風邪が移りますように!!!
――――――――――
熱出ると身体が熱くてしんどいです…、よね(^^;)
|