12/25 10:00の二人










朝目覚めて携帯を見ると、メールが2通。




誰からだろう?
そう思って受信ボックスを開くと差出人は昨日の昼に遊んだ3人の内の2人からだった。

1人はりゅーちゃん。
なんと、基山くんと付き合うことになったんだって!
たしかに、りゅーちゃんは基山くんにくっついたらいいよって言ったけど、まさか付き合うことになるとは…!
でも、いっちーや晴っちにとったらあの2人は相当もどかしい感じだったらしいし、結果オーライじゃないかな?


……あ、2通目はいっちーからだ。
…ふむ。これは、なんか文句なのか惚気なのかよく分からない内容だなぁ。とりあえず、昨夜は円堂くんと良い夜が過ごせたみたい。よかったよかった!


晴っちに至ってはメールも来てないし、涼野クンと上手くいったんだろうな。…うん。あれは絶対効果あるんだよ。『脳内の』豪炎寺くんはそりゃもうメロメロだったよ!『脳内の』ね…。さすがに転校して来て間もない私が豪炎寺くんとそこまでいってる訳ないって!晴っちったら、私たちのこと色々誤解してるのかな…?



はぁ……。
みんな好きな人とイブを過ごせたんだ…。

…別に、羨ましいなんて思ってないもん。いや、思ってるけど。








昨日のクリスマスイブ。
私は大好きな豪炎寺くんと一緒には過ごせなかった。

『夕香がどうしてもクリスマスパーティーをしたいってきかなくて…』


24日の予定を聞いた私に、豪炎寺くんは申し訳なさそうにそう答えた。
夕香っていうのは豪炎寺くんの妹さんの名前。
豪炎寺くんが夕香ちゃんのことすっごく大切に想ってることを知ってるし、私もアツヤっていう弟がいるから、その気持ちが分からない訳じゃない。


だから、仕方なかったのだ。

恋人たちのクリスマスイブ。
…のはずだけど、普段なかなか構ってあげられない夕香ちゃんのために、私ができること…。


そう思ってたら、勝手に口が『夕香ちゃんと素敵なクリスマスを過ごしてね』と、言っていた。
…本当は、2人で過ごしたかった、なんて私の我が儘だから。




もちろん、両親やアツヤと一緒に過ごすクリスマスイブもすごく楽しかった。いつもなかなかみんな揃って話す機会がないから、色んな話もできたし。
あと、いっちーからパーティー来ない?って誘われてたんだけど、円堂くんに悪いかなと思って遠慮した。てか、あれは遠慮しちゃうよ…




そんな訳で、私は24日も今日も好きな人には会えないまま過ごしています。

…うぅ、いいもんいいもん。
暇だからアツヤに構ってもらお。


…そんなことを思っていたら、





一一…コンコン。
部屋の扉がノックされる音。
ノックとほぼ同時に部屋のドアが開けられて、見るとアツヤが立っていた。


「あれ?アツヤ、どしたの?」

さっきまで今日はアツヤに構ってもらおうと思ってたのに、いきなりのご本人登場で少し驚く。
いつもは私の方がアツヤの部屋に押しかけるのに今日は珍しいなぁ、なんて思ってたら、ドアの所に突っ立ったまんまの弟は苦虫を潰したような顔をして私に言った。

「…姉ちゃん、下に客が来てる」


……あ、この顔は、もしかして。
至極嫌そうに言い放ったアツヤの顔に見覚えがあった私は、とにかく部屋を飛び出して急いで階段を駆け降りた。後ろで「姉ちゃんこけるぞ!」ってアツヤの声が聞こえたけど今ばっかりはゆっくりなんてしていられない。



たぶん、だけど。
たぶん、アツヤの言う『客』って……!





階段を下りて、玄関のドアを勢いよく開けると、やっぱりそこには私の大好きな人がいた。

目の前の彼は、勢いよく開いた扉に少々驚きながらも、いつもの冷静な口調で話し始める。


「……吹雪。急に、すまない」

「ごう、えんじ…くん……!」

まさか、そんな。
豪炎寺くんがわざわざ私の家にまで来てくれるなんて。
思ってもいなかった訪問者に私はただただ呆然とするしかなかった。だけど、混乱する私の頭に浮かんだ、一つの疑問。


「…なんで、来たの…?」

24日は夕香ちゃんと過ごして、てっきり25日の今日も一緒に過ごしているものだと思っていたのに。

「…夕香に、怒られた」

「……え?」

「なんで吹雪の所に行ってやらないのか、って」

「……!?」



…うっわぁ。私、最悪じゃん。
夕香ちゃんに気遣ってもらって、豪炎寺くんにも迷惑掛けて……!
ほんと、さいあく……




「……うぅ、」

「…吹雪!?な、なんで泣いてるんだ!?」

「だってぇ、…ひっ、わ、私…、迷惑、掛けてばっかり…で、…ひっく、わ…私ばっかりワガママ言ってて……」


あぁ…もう、本当に最悪だ。
豪炎寺くんの前で泣くつもりなんてなかったのに。
一度溢れだした涙はちょっとやそっとじゃ止まらなくて後から後からどんどん流れ出す。

「……ごめんね」

すん、と鼻をすすって呟けば、目の前の彼が動く気配がした。
その後すぐに訪れた暖かさ。


『抱き締められた』と遅れて気付く。



「…俺も、夕香に背中を押してもらわなかったらここに来れなかったと思う」

「…あは、夕香ちゃんには、適わないなぁ」

「まったくだ」


寒空の下で笑いあう私たちの息は白かったけど、不思議と寒いとは感じなかった。



りゅーちゃん、いっちー、晴っち。
1日遅れちゃったけど、私もクリスマスに嬉しいこと、あったよ。








end

――――――――――
豪吹♀馴れ初め編でした^o^






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