今日も今日とて青い空。
雲一つない空の下、俺達イナズマジャパンは練習に励んでいた。












「お疲れ様です〜!今日の練習はこれで終わりです!」



赤い縁のメガネがトレードマークのマネージャーが、元気な声で今日の練習の終わりを告げる。

その声を引き金に、どさりと尻餅をついてしまう人や顔を洗いに行く人、水分補給をする人など、みんながそれぞれの動きをし始めた。



その中で、ちょろちょろとした萌黄色の髪を揺らして動く人物が俺の目を惹く。


元エイリア学園で現在FFF日本代表で共に戦う仲間。緑川リュウジ。
ちなみに、俺の恋人でもある。

どうやら彼はマネージャーに頼まれてサッカーボールを運んでいるようだった。
腕いっぱいに持ったサッカーボールが今にも落ちそうで、正直見ていられない。
…本当に、昔っから目が離せないなぁ、なんて思いながら緑川に近づく。




「手伝おうか?」
「わっ!!ヒロト!ありがと〜」



ボールのせいで前が見えなかったのか、急に現れた俺に驚く緑川。
普段から大きな瞳をさらに大きくして後ろによろめいている。その拍子にとうとうボールが腕から零れ落ちてしまった。



「これ、どこまで運べばいい?」
「部室まで!」


落ちたボールを拾いながら問えば、すぐに返ってくる元気な声。
聞けば、今夜の夕食を他の人より多めに盛り付けてもらえる、という条件でマネージャーの代わりにボールを片付ける仕事をしているらしい。

…つまり、緑川は食べ物につられた、と。
彼らしくて、ついつい笑ってしまう。



緑川が、何笑ってんだよ?と俺に不審の目を向ける。なんでもないよ、と笑っているといつの間にか部室に到着していた。












「……えっと、サッカーボールはこの中に…、っと」


狭い部室の中をかい潜って、緑川はボールを鉄製の大きなカゴの中に入れた。
俺は入口付近でその様子を見ていて、ついでにヒロトの持ってるボールもちょうだい、と緑川が振り返った時だった。


緑川の肩が、近くに置いてあった棚に当たったのだ。散らかった狭い部室内で棚が傾き、またその棚の倒れる先には歴代の、大変な量のサッカー資料が積み上げられていた。
さらに、その資料の倒れる先には緑川の姿。



「緑川、あぶない…っ!!!」

とっさのことで反応が遅れたが、狭い部室のお陰でなんとか緑川のところまで行き、大量の資料から彼を守る。
しかし、あまりに急だったため、うまく庇うことができずにバランスを崩してしまった。


埃っぽい部室の中でドサリ、と二人分の体重が倒れる音がした。






気がつけば、俺は緑川に覆いかぶさるようにして、大量のサッカー資料を頭から被っていて。


「……いってて」
「緑川、大丈夫?怪我とかしてない?」

後頭部を押さえながら起き上がろうとする緑川が心配で、顔を覗き込むようにして様子を伺えば、近い!と言って顔を逸らされてしまった。


「…と、とにかく誰か呼ばないと…!」

未だ緑川に覆いかぶさる体勢のまま、目の前の緑川はこの部室をめちゃくちゃにしてしまった事に血相を変えている。
いくらマネージャーの代わりに仕事をしていたからと言っても、部室にある棚を倒し、部屋中資料だらけにしてしまったのだから焦るのも無理ないと思う。


だけど、俺としてはこの体勢にもっと焦って欲しかったんだよね。
今も仰向けになって、あわあわとしている緑川。



だから俺は混乱しているだろう緑川のために、ゆっくりと口を開いたのだ。







誰か来ちゃってもいいんだ?


(俺達のこの状況みたらみんなはどう思うかな?)
(…この、状況?………っ!??)
(ふふ、やっと気付いたんだ、緑川)
(うわああああ!!?は、早くどけろよバカひろとぉ!!)

















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