※基♀緑♀



宣言します











「……と、言うことで、一緒にご飯食べに行くことになりました」

「なにそれどういうこと!?リュウ、そんなの私聞いてないよ…?」


ざわめく教室内。
向かい合った机で話をしているのは、萌黄色の髪を高い位置で結んだ緑川リュウと鮮やかな赤髪で耳の上のはねた部分が可愛らしい基山ヒロ子。

2人とも自覚はないが、男女問わずの人気者である。
クラスでは密かにセクシー&キュートコンビなどと呼ばれ、男子は恋心、女子は憧れの眼差しを向ける者が日々増えている…とも言われている。






そんな周囲のイメージなど知る由もなく、リュウとヒロ子の会話は続く。



「食事行く人って……この前ウチの文化祭でリュウにナンパしてた人!?」

机に手をつき、普段見せないような剣幕で相手に詰め寄る赤い髪のヒロ子は、クラスメイトいわく、セクシー担当。


「やだなぁ!ナンパだなんて〜!一緒に食事しようって誘われただけだよ〜」

ヒロ子の剣幕をものともせず、眉毛をハの字にして笑って流すのは、キュート担当のリュウである。



「食事に誘うっていうのも立派なナンパなの!!もう、リュウは可愛いんだからもう少し自覚を持ってよ…!」

「可愛いのはヒロ子だよ!男の子はみんなヒロ子のこと狙ってるんだから、気をつけなきゃダメだよ?」


少し頬を膨らませて、上目使いでリュウにめっ!とされたヒロ子は一瞬頬を染め、グラリとよろめいたかと思うと、座っている椅子の背もたれに体重を預けた。




「…リュウもかなりモテるってこと、そろそろ自覚して欲しいんだけどな…」

ポソリと呟かれたヒロ子の言葉は、ざわめく教室内でリュウの耳に届くはずはなく、ポニーテールの彼女は「何か言ったー?」と首を傾げている。


昔から大人っぽくて、落ち着いていて、成績優秀、運動も出来て美人……というパーフェクトなヒロ子の近くに居過ぎたためか、リュウは「自分も可愛い」とは到底思えないらしい。
いくらヒロ子が「可愛い」と言っても、「またまた〜!褒めても何も出ないよ〜?」と言って本気にしないのだ。


幼なじみのリュウを昔から妹のように可愛がり、溺愛しているヒロ子にとって、リュウが可愛い、ということを自覚してくれない事はもはや一番の悩み事になりつつあった。
加えて、今までどこに行くのも一緒に行動してきたリュウが、今回男と、2人っきりで食事をすると言う。そのことを今まで内緒にしていたという事実に、ヒロ子はかなりショックを受けていたのである。




「……そんなの、行かせないからね」

「うーん、でももう行くって言っちゃったし…」

人差し指で頬を掻きながら、正直迷ったんだけどね…と零すリュウに、ヒロ子は迷ったなら相談してよ、と返す。


「……リュウ、その食事いつ行くの?」

「えーと、たしか今度の日曜…だったかな?」

「……ふーん、」



何か考える素振りを見せたヒロ子は、急に座っていた椅子から腰を浮かせ、立ち上がる。


「…じゃあさ、」

ヒロ子が口を開いて言葉を発している、とリュウが認識した時には、既に遅かった。
リュウの柔らかい唇に触れたのは、同じくヒロ子の唇。



「…こうすれば、リュウはあの男との約束、断ってくれる?」

「…………へ、」









ざわめく教室内は、いつの間にか先程とは違うざわめきに包まれていた。
クラスの視線は二人に注がれ、ついさっきヒロ子がリュウにした行為は殆どのクラスメイトに見られてしまっていたようだ。唖然とする者や黄色い声を上げる者、頬を染めて固まっている者もいた。



「…ちょっ!!ヒロ子、なにして…!?」

「だって、みんながいる前でこーいう事すれば、噂になるでしょ?リュウに私みたいなのが居るって相手の男が知ったら日曜日、行かなくて済むじゃない」


未だにリュウの顔近くにある頭を傾けて微笑むヒロ子は、自分にどれだけ知名度があるか理解した上で、あっけらかんと言うのだ。

そんなヒロ子を見て頬の熱がなかなか収まらないリュウは、恥ずかしさとか呆れとかが入り交じった、複雑な表情をしている。
さっきから突き刺さるようなクラスの視線に、リュウは居心地が悪いらしい。とうとう俯いてしまった。



「…こーいう事はみんなの前でしないって言ったじゃん…!」


クラスメイトがざわめく中で呟かれた、聞こえるかどうかの微かな声はしっかりとヒロ子の耳に届いていた。



「……リュウのためだから、…ね?」


そう言いながら、そっとリュウの手を取って椅子から立たせるヒロ子の顔は、どんな男子でも一発で恋に落ちそうな笑顔である。
その笑顔に何も言えなくなって、リュウはうぅぅ…と唸る。



ガタリと音を立てて立ち上がった二人を、教室にいる人々が見守る。
ヒロ子がリュウの手を引っ張る形で教室を後にしようとした、その時。
先頭を歩くヒロ子がピタリと足を止めた。





「…そういう訳で、みなさーん!私たち、『こーいう関係』なので、私たち……特にリュウを狙ってる男子は諦めてね」


明るい口調で爆弾発言を投下していったクラスの美女、ヒロ子はリュウの制止の声も聞かず、手を繋いだまま教室から飛び出して行ったのだった。











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突発基♀緑♀でした。
百合とか初めて書いた…
あれ?これちゃんと百合になってるん…?←







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