※にょた部屋の設定に基づいています。
※基山くんと緑川さんが付き合っている。






グッドモーニング?












秋もすっかり深まった早朝。

俺は肩から入り込む冷気によって目が覚めた。どうやら横を向いて寝ていたために、肩が布団から出てしまったらしい。
とにかく今現在も身体へ伝わる寒さをどうにかしたくて、布団を肩より上へ手繰り寄せる。





………と、ここで俺は気付いた。

なんだかベッドが狭い。
俺のベッドこんなに窮屈だったかな…?よく考えたら、布団から肩がはみ出ることなんて今まで一度もなかった。俺そんなに寝相悪くないしね。

自分しか寝ていないはずなのに、何故狭く感じるのか。それはきっと俺が壁の方を向いて寝ていて閉塞感があるからで、寝返りを打てばいつも見ている俺の部屋が広がり、それは解決すると安易に考えていた。

背後に思いがけない人物がすやすやと寝息を立てているなんてこれっぽっちも思わずに。






思いがけない人物。そう、それは俺の幼なじみで恋人の、緑川リュウ。

「……一一一っ!!?」


あまりの驚きに声が出そうになってギリギリのところでなんとか堪える。



……え?
………え!?なんでリュウがここに!!?

たしかに俺達は恋人同士だが、まだ一線を越えた覚えはない。
いや、俺としては越えたいんだけど、そこはリュウの心の準備ができてから…なんて勝手に考えて、いた…んだけど。

まさか、俺は覚えてないけど、昨夜俺は勢いで間違いを犯してしまったのだろうか…!?
嫌な汗が背中を伝う。

いやいや、いくらリュウが可愛いからって嫌がる彼女を無理矢理どうにかしようなんて気はさらさら無い。
普段、彼女が振り撒く無意識お誘いオーラに俺がどれほど耐え忍んでいると思ってるんだ…!



そして、今まで自分の思考に入り浸っていたせいで隣で眠る彼女のことをちゃんと見ていなかったことに漸く気付く。





…うん、服はちゃんと着てる。加えて乱れてもいない。
よし、なんとか大丈夫そうだ…!よかった。これでリュウの衣服が乱れていたりしたら俺は…俺は……っ!
風丸や南雲を始め、方々の女子からきっと抹殺されていたことだろう。

隣で安心しきって眠る彼女をもっと見ていたくて、少しだけ距離を詰める。


いつもは真ん中で分かれている前髪はしんなりと重力に従って垂れ、長い睫毛にかかっている。触ったらもちもちとしていそうな頬は、布団が温かいせいか少し桃色に色付いて、薄く開いた口からは真っ赤に熟れた果実のような舌が覗いていた。



見れば見るほどリュウが愛しくて堪らなくなる。
気付けばリュウの方へどんどん近付いて今にも髪と髪が触れそうになっていて慌てて離れた。



……っ!あぶない。
キス、しそうだった…!




さすがに俺だって寝ているリュウを襲うつもりはない。
…けど、このまま彼女を見てたら駄目な気がする……。主に理性が。


リュウが起きないようにそっとベッドから身を起こす。

すると俺の着ているパジャマの腰当たりを引っ張られる感覚。
なんとリュウは俺のパジャマをしっかりと握っていたのだ。
これではベッドから降りるどころか身動き一つすれば彼女が振動で起きてしまいそうで。



「……ど、どうしよ」


ひくりと顔が強張るのを感じ、どうやってこの状況を切り抜けるか思考を巡らす。



少しでも足を動かせば彼女の太腿に当たりそうな距離だ。

こんな時に限って働いてくれない俺の脳みそは本当に役立たずだと思う。普段勉強はできる方なのに、今は頭が真っ白でぐるぐると隣で寝ている恋人の事ばかり考えてしまう。







…と、その瞬間。
くぐもったようなリュウの甘い声が部屋に響く。




「……………ぅん、ん…」

「………っ!!?」


びくりと大きく体を震わせた俺は心臓が爆発するんじゃないかと思うくらいドキドキしながら、再びリュウへと目を向ける。


しっかりと閉じられた瞳は未だすやすやと安らかな寝息を立てている。
…どうやら少し身じろいだだけのようだ。


あ、危なかった…!
今リュウが起きたら確実に変な雰囲気になるに決まってる。




とりあえず、これ以上変な気持ちにならないように、俺はこのベッドから抜け出さなければならない。
……勿体ないけど。
でもこのままリュウの隣にいたら色々と危ない、ということくらい自分でも重々承知だ。

まずはこのがっちりと掴まれたリュウの指を服から剥がすことに専念しよう…!
なるべく邪な考えは排除しなければ…。





俺は、そっとリュウの白くてほっそりとした指に自分の指を重ねた。自分の骨ばった指とはまるで違う彼女のそれに、思わず生唾を飲み込む。


一本、二本……、
心の中で数えながら、ゆっくりと指を解いていく。
リュウは思っていたよりぐっすりと眠っていたようで、俺が多少触っても身じろぎ一つせず、ホッと胸を撫で下ろす。






漸くリュウから全ての指を外し、安心したのも束の間。
第二の関門が俺を待ち構えていた。



一…コンコン、


「おーい、ヒロト起きてるー?起きてたらサッカーしよ!」

「わざわざ呼びにこなくてもいいだろう…先に行っておけばいいじゃないか」




一……やばい。
晴と風介だ。

思ってみれば、今日は休日。
ここ最近、休日になったら風介と晴、俺とリュウで近くの公園へサッカーをしに行っていたことを今更ながら思い出す。
風介と晴はきっとなかなか起きてこない俺とリュウを心配してわざわざ部屋に来たのだろう。
リュウを起こしに行かないのは、それが俺の役目になっているから。
その役目がこんな所で役に立つとは…!
リュウの寝顔を誰にも見せたくないから、という安易な理由とはいえ、習慣にしておいて本当によかった!!



……だけど、この非常にやばい状況は変わりそうにない。いや、むしろ状況は悪い方に向かっている気がする…


「ヒーロートー!起きろってば!サッカーする時間なくなるぞー?」


さっきよりも若干ドアを叩く音が大きくなり、それに伴って晴の声も大きくなる。

あああ、晴…!そんなに強くドア叩いたら壊れちゃうよ!
てか、リュウが起きる……!



堪え性のない晴のことだ。
きっと部屋のドアが開くのも時間の問題な訳で。


折角リュウの指を剥がしたと思ったのになんでこう、次から次へと…!
何なんだ…今日は厄日なんだろうか…?

俺の眼下で天使のような寝顔を見せる彼女はそれはもう正に天使としか言いようがないくらい煌めいていて、俺は朝からなんでこんな災難に見舞われなければならないんだろうか、とうっかり涙が出そうになってしまった。




そしてさらに追い討ちをかけるように、今度は隣で寝ていたリュウがもぞもぞと動き出す。


「………ぅうん…、ん……あれ…?」

扉を叩く大きな音と声が聞こえれば、さすがのリュウも煩かったようで、眉を潜めて正に今、大きな瞳に俺の姿を写そうとしている。



「ったく、何やってんだよ!もういい!開けるからな!!!」

「……え!!?ちょ、晴……」




混乱した頭の俺がリュウに布団を頭から被せたのと晴が部屋の扉を開けたのはほぼ同時だった。





「ごめん!リュウ!!!」
「きゃあわあああああ!?何なに!!?真っ暗だぁぁ!!」


「「…………え!?」」



晴が開け放った扉の先、つまり俺の部屋に広がる光景。
混乱した俺は、とにかくリュウを隠さなければ、という非常にお粗末な考えに辿り着き、布団をリュウの頭まですっぽりと被せようとしたのだが、もちろん晴とその後ろに立っていた風介には俺の必死な考えなんて分かるはずもなく、まるで俺が嫌がって暴れるリュウを布団で押さえ付け、襲っていると認識したらしい。……っていうか、二人の顔を見ていれば分かる。伊達にあの二人とも幼なじみしてない。



その結果。

あの光景を目の当たりにした風介と晴からその後一週間、変態呼ばわりされ、リュウに何故俺の隣で寝ていたのか問いただすのに、散々な苦労をすることになった。





リュウいわく。

「寝てる人って体温が温かいって聞いたから…。その、いつも体温の低いヒロトもあったかいのかなぁ……、って……」



そして眠る俺を触ってる内に自分も眠くなって、あろうことか俺の布団の中に入り込んだらしい。

その理由を聞いて俺が白目を剥きそうになったのは言うまでもない。





こんなことなら我慢なんてせずに最初から襲っておけばよかった…なんて、目の前で恥ずかしそうに頬を染める彼女には口が裂けても言えないと俺は思ったのだった。










end


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大変お待たせいたしました…!
鳶すけさまリクエストの『基緑♀で寝起きドッキリ』です…!
寝起きドッキリか、お風呂でドッキリか最後まで悩みに悩んで、最終的に寝起きドッキリにしてみました!だらだらと異様に長くて本当に申し訳ありません!>< 書くのが楽しくてつい…^///^
鳶すけさまから頂いた美味しいシチュエーションを活かせているかどうか不安です…!
しかもにょた部屋設定で…と言われていたのにヒロトとリュウが付き合ってる設定にしてしまいました……\(^O^)/アッー
すみません……こんなgdgdな感じですが、鳶すけさまに捧げます…!
苦情・書き直し等、いつでも受け付けておりますので!!!

それでは、この度はリクエストにご参加くださって本当にありがとうございました!!






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