※バーン視点。
目が覚めると、真っ白な天井と鼻をつく薬品の臭いがして、「あ、これ俺の部屋じゃねぇな」と頭が真っ先に認識した。
「…ん、ここどこだ……?」
「医務室だよ」
完全に一人だと思い込んでいたのに、まさか返答があるとは思わなくて勢いよく起き上がる。
姿を見なくても分かる。この声は…
ガゼルだ。
勢いよく起きたせいでおでこにのっていた濡れタオルがペショリと音を立てて落ちる。
「………あ、…え?なんで、あんたがここに……!?」
まだ状況をうまく飲み込めてない俺に、ベッドサイドでパイプイスに座ったガゼルは、何故俺がここに運ばれたのかを大まかに教えてくれた。
あ−−…なんか、思い出してきたぞ。
ベッドに沈む身体と共に、自分の不甲斐無さに心も沈む。
くそ、ガゼルに借りを作ってしまった…
まだぼんやりする頭でそんなことを考えていたら、目と鼻の先にガゼルの顔があって物凄く焦った。
「…まだ、痛むのか?頭」
「……へっ!?あ、いや、別に頭は……もう痛くねぇ」
鼻と鼻がくっつきそうなくらい、奴は近づいて俺の表情を伺う。
いや、正直こんなに近づいてちゃ見えねぇだろ、って思うけど、俺は俺でガゼルのアイスブルーの瞳に目をそらせなくて。
言いたかねぇけど、やっぱあいつの瞳の色、綺麗なんだよな。
それにしてもガゼルの奴、なんか妙に優しいな…
なんでだ……?
「…俺、何分くらい気を失ってた…?」
「……まあ、ざっと一時間だな」
俺の質問に素直に答えるガゼル。
だからなんでそんなに優しいんだ…!?
……まさか………!!
か、考えたくねぇけど…!
「へ…変なこととか、してねぇだろうな…!?」
「……変なこと?」
疑いの眼差しを向けながら、俺は、自身の身を守るようにガゼルと距離をとった。
と言っても、ベッドの上だからそんなに距離も開かなかったが。
当のガゼルはと言うと意味が分からないという風に顔をしかめる。
が、すぐに意味を理解したようでニヤリと妖艶な笑みを浮かべた。
「…変な事って……。バーン、君は私に変な事をされたかったのかい?」
「……なっ!?」
違う、とすぐに否定したかったのに、それはガゼルに唇を塞がれて叶わなかった。
しかもガゼルの奴、いつの間にか俺の後頭部をしっかり持っていて、逃げることもできない。
押さえられた後頭部に少しだけ痛みが走って顔をしかめると、ガゼルはすぐに唇を離して、ベッドに座る俺を正面から抱きしめた。
………え、ちょ…ちょっと待て!!
本当に今日のガゼルはどこかおかしいんじゃないだろうか。
てか、こいつ本当にガゼル本人なのか!?
ガゼルには失礼かもしれねぇけど、そんなことを思ってつい口に出す。
「ガ…ガゼル……だよ、な?」
突拍子のない行動はいつものことだが、かつて彼がこんなに甘えたことがあっただろうか。いや、ない。
他人から甘えられることに慣れていない俺はこんな時どうすればいいのか分からなくて、とりあえず、そっとガゼルの背中に腕を回すことにした。
すると、耳元で聞こえた微かな声。
「君が、なかなか目を覚まさないから……心配した」
本当に、すごく、小さな声だったけど俺の耳にはしっかりと届いていて。
驚きのあまり目を見開いて、くっついているガゼルを離そうとするとさらに力を込めて距離を詰めてくる。
髪から覗く奴の耳が赤いのはきっと気のせいではないはずだ。
そんなガゼルを見て、俺もだんだん顔が火照るのを感じる。
まさか、あのガゼルが俺のことを心配してたなんて。
いつのまにか消えていた後頭部の痛みの代わりに、笑いが込み上げる。
やっぱ俺、こいつのこと好きだわ。
絶対、言ってやんねぇけど。
end
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米さまリクエストのガゼバンで失神ネタです。
本当に遅くなってしまい、申し訳ございません!
しかも練習試合中に〜…と書かれていたのですが普通に練習中になってるし……!orz
そして、予想以上に長くなってしまい、2つに分けてしまいました……!原因はガゼルとバーン視点の両方入れたことですよね、うん…。すみません!><
ぐだぐだ長くなって、すっごく甘くなってしまいました…
もっと殺伐とした2人が好きだったらほんとすみません…!
書き直し、いつでも受け付けますので!
こんなのですが、米さまに捧げます。
それでは、この度はリクエストありがとうございました!!
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