今日からさよなら






繋いだ手をどうか離さないで。
それが唯一の支えで、希望だったから。











「…グラン様、お呼びですか?」

「………ああ、レーゼ」


何もない、無機質な部屋。
ここは普段マスターランクの者しか入れない区域であり、グラン様の部屋でもある。

真っ白な壁に囲まれて、生活するのに必要最低限しかなさそうな空間に、彼は居た。



何故セカンドランクであるジェミニストームキャプテンの私がここに呼ばれたのか。


その答えは、私自身が一番よく分かっていた。




先日の雷門との戦い。


そこで敗北してしまった我々ジェミニストームには『追放』という名の処罰が待っていた。
特にチームのキャプテンであった私はその全責任を負って、グラン様に呼ばれたのだった。



「…そこに座って」

「………はい」



何をされるのだろう。

真っ先に思い浮かんだのは彼に何かされるのではないかという恐怖にも似た不安。


「そんなに怯えないでよ、傷つくなぁ」




そう言っていつもの感情のない声が聞こえる。
よくもそんな口がきけたものだ。

彼の気分によって毎回この部屋に呼び出されるこっちの身にもなって欲しい。
呼び出されて何をされるのかと言われれば、それこそグラン様の気分次第で。

機嫌の良いときは抱きしめられたり唇を塞がれたりと、まるで恋人同士がするような行為をされる。
しかし、機嫌の悪い時は最悪だ。
殴る蹴るは当たり前。さらに服を脱がされ彼を満足させるまで何度もイかされる。





触らぬ神に祟りなし。
文句なんて言えるはずもなく、ただグラン様に従うのが私の役目だと感じていた。



「さて、今日はレーゼにさよならを言おうと思ってね、呼んだんだよ」




やっぱり。
雷門に負けた我々には当然の報いだろう。


グラン様はソファーに座った私に近づいてそっと手を握った。
彼の今の雰囲気と握られた手の温もりからして、機嫌が悪い訳ではなさそうだ。
そっと安堵の息を吐き、伏せた目をあげると真っ赤な髪が視界に映る。
グラン様だ、と頭が認識するより先に、唇を奪われていた。


啄むように施される口づけに酔いそうになりながら、相手は握った手が離れないように、指と指を絡めてさらに繋がりを強くしようとする。
感情を全く表に出さず、無表情なのに、手を繋いでいることでグラン様の心も近くなったような、そんな錯覚までしてしまいそうだった。





じゃれあうような長いキスの後、呼吸をするために一瞬だけ開いた口に今度は舌が侵入してくる。


「…ん、はぁ、…んぅぅ…っ!」

繋いだ手から伝わる温かさよりもさらに熱い舌が口内を探るように動く。

グラン様の舌に翻弄されながらも、なんとかそれに応えていると今度は空いている手がユニフォームの下へと伸びて、私の身体に触れた。


「………ひっ!!?」

いつもは機嫌の悪い時にしかされない行為をされるのかと感じ、身体が一気に硬直する。




「…ごめんね、レーゼ。今日は機嫌悪い訳じゃないから…安心して」


グラン様の言葉に、びくりと身体が反応する。
彼には最初から分かっていたのだ。
私がいつも彼の機嫌を窺っていることを。



「…大丈夫、これで最後だから。だから、この熱を、俺の熱を忘れないで」


「忘れないで」
そう言うグラン様の顔があまりにも辛そうで、私は思わず彼の頬に手を伸ばす。





違う……違うんです、グラン様…
確かに私は貴方の機嫌を窺っていました。
この部屋に来ると身が縮こまる思いもしました。


けれど貴方と、グラン様と一緒に過ごした時間は特別だった。
どんなに酷いことをされても、どんなに暴言を吐かれても、最後は必ず微笑んで、手を握ってくれるから。

私はそんなグラン様が好き、だったのだ。


「…ごめん、ごめんね、レーゼ」

「…グラン、様」

これ以上グラン様に謝って欲しくなくて、切なそうにひそめる彼の眉間にキスを落とし、繋ぐ手に力を込める。



その手が離された時、世界は終わる。
何も知らない私が、そう直感的に感じることができたのは、彼と繋がっていたからなのか。





ぼやける視界の中で、最後に見た彼の目は悲しいくらい深い色をした翠だった。







end


−−−−−−−−−−
お待たせいたしました。きおり様リクエストの、グラレゼシリアスです。
これは…シリアスになって、いるでしょうか…?汗
グラレゼと言ったらやっぱりありきたりだけど、記憶を消すあの辺りを書きたい!と思い、気持ち的にはグラ→←レゼにできたらいいな、と思いながら書いてました。
本当にこんなのですみません……
書き直しはいつでも受け付けております…!
きおり様の書かれるグラレゼが大好きな私としましては、少しだけでもグラレゼの書き方教えて頂きたいです(^O^)←
きおり様の書く文にいつも感嘆の息を吐いて、ベッドをゴロゴロしてます。
…キモいな、えい子←
とにかく、不慣れな感じのグラレゼ文ですみませんでした…!orz

では、この度はリクエスト本当にありがとうございました!




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -