すれ違い両想い



※高校生パロ基緑♀+涼南♀
※口調が荒いですが、南雲も女の子です。
※オチが迷子になりました。








「はる姉ーーー!!」

教室の雑音も掻き消すほどの、ひときわ大きな声が響く。


「…お前な『先輩』つけて呼べよ!一応年上だぞ!!」

教室で友人と雑談していた南雲晴は思わずガタンと椅子から立ち上がった。

「えー!いいじゃん!幼なじみでしょ!?」

緑川はぶーぶー言いながら、相変わらず大きな声で南雲に文句を言う。

「あのなぁ…。お前の好きな諺で言うとな、『親しき仲にも礼儀あり』ってやつだよ」

「うー… 分かったよ、はる……先輩」


緑川の諺好きを上手く利用して、南雲はいつものやり取りを短時間で終えた。



「…で?なんの用だよ。ヒロトなら今出てるけど?」

「なっ!なんでそこでヒロト……先輩が出てくるんだよ!?」

緑川は焦ったように目線を逸らす。
頬がほんのり赤い。

「はいはい。早く用件言わないと昼休み終わるぞー?」


わたわたとする緑川をいつものことだと受け流し、教室のドアにもたれ掛かる南雲は時計をチラリと見ながら会話を続けた。



「あっ!そうそう!!借りてた辞書、返しにきた!風丸…先輩、から次の授業で使うって聞いたから……」

「あ、マジで?さんきゅー!」

辞書を手渡されて、さっきの不機嫌そうな顔はどこへやら。南雲は人懐っこい笑顔を向けて微笑む。







そんな2人のやり取りを教室にいる男子たちは遠巻きに眺めていた。


ただでさえ赤髪と萌黄の髪で目立つというのに、1人は学年3トップの1人であのモテモテ涼野の彼女(らしい)だし、もう1人はその声の大きさと2年の3トップと幼なじみ、ということで有名だ。

自然と好奇な目で見てしまう。
その上、2人とも贔屓目なしに見ても可愛いのだ。
密かに想いを寄せている奴もいたりする。
良い意味でも、悪い意味でも、2人はよく注目されてしまうのだった。





しかし、2人に話しかけようとする勇者はいない。
あの2人の周りだけ近寄りがたいオーラを感じるのだ。
もちろん、あの2人からもいくらかオーラを感じるのだが……
それよりも強くて黒いオーラ。




そのオーラの源を辿ってみると


そう、南雲と緑川が雑談をしている少し後ろに用事を済ました涼野と基山がいたのだ。
どうやら、南雲と緑川はまだ涼野と基山の存在に気付いてないらしい。
相変わらず他愛のないお喋りを続けている。


さっきから黒いオーラを放ちながら周りにいる男子たちを静かに牽制している涼野と基山。









「あの子がいないと思ったら……」

「しかも緑川もいるね。どうしたんだろ?」


周りの女子の黄色い声はいつものことだ。
それより、今2人にとって問題なのは南雲と緑川が、教室の隅で話しているのにも関わらず、「男子に視線を注がれている」ということである。



もちろん南雲の彼氏である涼野がそんな状況を許すはずがない。基山だって想いこそ告げてはないが、好きな子が男子に注目されているとなれば阻止したいというのは当たり前で。





「…見てられないな。あの子は誰のものなのかをこの教室にいる人間に教えないと駄目みたいだ」

「…だね。悪い虫は少ないに越したことはないし」


不穏な雰囲気を漂わせる涼野と基山は遂に行動に出るべく、南雲と緑川がいる方へ歩んでいく。






そんな涼野と基山の考えなど露知らず、話をしていた南雲と緑川。


「…で?ぶっちゃけどうなんだよ、リュウ。ヒロトのこと、好きなんだろ?」

周囲に人がいないことをなんとなく確認してからそっと声を潜める南雲。
さっきまで食堂のメニューが変わったとか駅前においしいアイスの店ができたとか話していたのに急に話の矛先が自分に向いて、驚く緑川はおずおずと口を開く。


「…っっ!!………………好き、なの……かなぁ?」

急に緑川の声のボリュームが下がり、シュンとうなだれる。
口を尖らせてうーん、と悩んでる様子は小さい頃から変わっていなくて、南雲は自然に笑みが零れた



……時だった。


「その顔、禁止」

後ろからにゅっと手が伸びてきたかと思うと、南雲の頬っぺたを左右に引っ張る。

「な!?なにひやがる!? …って、ふーすけ!!?」

「あれ、風兄?なんでここに……」

「そりゃ、ここが俺達の教室だからだよ、緑川」

涼野と同じく緑川と南雲の後ろに立っていた基山はにこりと笑って緑川の肩に手を置いた。


「わああっ!?ひ、ヒロト先輩!!?」

「ほら、『先輩』は付けなくてもいいって言ったじゃないか」

「あぅ……だ、だって、『親しき仲にも礼儀あり』だし…その……」

「ふーん、『親しき仲』か。それは悪くないかもね」

「ふーしゅけ!!ちょ、てをはなひぇええ!!」


未だに両頬を掴まれてバタバタしている南雲は完璧にパニック状態。
そのパニック状態の南雲を涼野は愛おしむように見ている。

「ふふ、やっぱり君はそうやって追い詰められてる顔がよく似合う…」

「風兄!!それ、なんか間違ってる!!!」


涼野の少し間違った愛情表現にツッコミを入れつつ、緑川は後ろに立つ基山に意識を向ける。
先程、南雲と話していた内容がちょうど基山についてだったため緑川はいつもにも増して動揺していた。

そんな焦った動作一つ一つを可愛いと思いながら基山は緑川の無防備なうなじをからかうように撫でる。


「うひゃうっ!?な、ななな何すんだよっっ!」

「いや、可愛いなって思って」

「……っだから!そういう言葉は私以外にもっと掛ける人がいるんじゃないの!?」


うなじを撫でられた恥ずかしさと不意打ちとが重なり、緑川の羞恥心は最高潮に達しそうになっていた。
しかし羞恥でいっぱいの緑川は気付いていなかったのだ。
基山が今の緑川の言葉で眉間にしわを寄せたことを。

「……何で、そう思うの?」

「…………え?」


いつもとは違う、基山の厳しい瞳に緑川は若干怯んでしまう。

「…俺は、」




キーンコーン カーンコーン

基山が口を開いたのと同時に校舎に聞こえた、昼休みの終わりを告げる鐘。



「…じゃあ、予鈴…鳴ったから行くね」


そう言い残し、踵をかえす緑川を基山はただ黙って見送るしかなかった。









*おまけ*

涼「…ヒロト、悪い虫を追い払うんじゃなかったの?」

南「わりゅいむひ…?」

涼「あのやり取りじゃ、少なくとも仲良くは見えないけど…」

基「…分かってる」

涼「お節介を承知で言わせてもらうけど、リュウだって結構人気なんだからうかうかしてると取られてしまうぞ?」

基「……リュウの心がちゃんと整理できたら伝えようと思ったんだけどね」

南「…………(あれ、ヒロトもリュウのこと…)」

涼「私は早く伝えた方がいいと思うぞ」

基「……うん」

南「(結局ヒロトはリュウの心が固まらないからって足踏みしてんだな……めんどくせーなー…お互いに)」

涼「…おや、晴が大人しくなったな、珍しい」

南「……! お、おりぇだって、おとにゃしいときくりゃい、あるんだかりゃなぁー! てか、ふーしゅけはいいかげん、て、はにゃしぇぇぇぇ!!!」









当初書こうと思ってた話と随分違うものになりました\(^O^)/
話の内容をぐだぐだにするのはえい子の得意技です←
続きそうだけど続かないです。
ただ、基山くんの片思い的な気持ちはまだまだ続けてもらいます^0^←






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