※高校生基山×保育士みどりん
※基山くんに弟がいます
※基緑のつもりだけど緑基にも見える
※なんでも許せる人向け
「ねぇせんせ、おおきくなったらおれとけっこんしよ?」
純粋で大きな瞳をクリクリさせて、小さな子どもがオレの背中にくっついてくる。
こいつは基山ヒロ。オレが担任している5歳児クラスの一人だ。
短大出てすぐのオレが一人で5歳児の担任とか荷が重過ぎるだろ、と思ったけど毎日こいつらの面倒見てたらそんなことも次第にどうでもよくなってきた。
そして、このクラスでオレにとっての問題児、基山ヒロに最近毎日のようにこうしてプロポーズ紛いの言葉を言われ続けているのだ。
まったく、なんで男のオレが結婚なんか迫られなきゃならないんだよ!
たしかヒロには高校生の兄がいる。
今までにも何度かお迎えの時に話したりしたが、いかにも優等生という感じで、あんな人がこのヒロにこんな変なこと吹き込むなんて思えない。
顔はすごく似てるのにどうしてこうも性格が違うのか…
オレはヒロに気付かれないようにそっとため息を吐き、いつもの言葉を言うべく息を吸った。
「あのな、ヒロくん。何度も言ってるけど、オレ男だからね?だから結婚とかでき…」
「………ぅ、」
いつものようにお決まりの台詞を返すと、ヒロはいきなりポロポロと大粒の涙を流し始めた。
え、なんで!?
いつもはオレの言葉なんて無視して結婚、結婚って言うくせに!!
…あー、もう!
「わ、悪かったよ!ごめんな。そうだよな、男同士でも好きならしょうがないもんな!うん」
「……!」
オレの言葉に、ぱぁぁぁと音が出そうなくらい喜びの表情を見せたヒロは、両手をこちらにスッと出し、「抱っこ」の合図をしてきた。
さすがに5歳児の癖に抱っこはないだろ、と内心思いつつさっきまで泣いていたことを思い出し、今日だけだぞ、と言って抱っこする。
すると、ヒロの涙はぴたりの止んでいつもの眩しい笑顔を見せた。
…やっぱり子どもだな、なんてほほえましく思っていると、部屋の扉がガラリと開けられる音。
「…あ、ヒロ、迎えに来たよ」
扉を開けて部屋に入って来た赤い髪の青年は、学校帰りな為、紺色のブレザーに髪の色より少し暗めな色をしたネクタイをしている。
「あ、お帰りなさい」
今日ヒロを迎えに来たのはちょうどオレが頭の中に思い浮かべていた人物、基山ヒロトだった。
「ヒロくん、お兄さんが迎えにきたよ?」
未だにオレの腕の中で抱っこ状態のヒロを彼の兄であるヒロトに渡そうとする。
……が、
ヒロはオレのエプロンをぎゅっと掴んで離さない。
「おい、ヒロ。先生が困ってるだろ。さぁ、家に帰ろう」
「やだやだ!おれせんせーといっしょじゃなきゃやだ!!」
「先生だって仕事があるんだ!ほら、早く手離せ!」
ぐいっと半ば強引にヒロトがヒロをオレから引きはがすとヒロは駄々をこねながらヒロトの腕の中で暴れる。
「やだやだ!おれせんせーとけっこんするんだもん!!」
「「…っ!?」」
暴れるヒロの言葉にオレと、ヒロトまでもがびくりと肩を震わせる。
「……え?緑川…せんせい?ヒロと結婚するんですか…?」
なんだか不安そうな面持ちでこちらの表情を伺うヒロト。
なんで彼がこんなに心配そうにしているんだろう…?
「いや、子どもの言うことだから……うん、その…」
「結婚OKしちゃったんですか!?」
「そこまでは…!」
たしかに好きになるのは自由だって言ったけど。
結婚する、とは……言ってないよな、うん。よし。
「えー!せんせい、おれとけっこんしてくれるんじゃなかったの!?」
「ヒロ!先生は俺と……あ、いや… もういいから早く帰るぞ!」
「……?」
あれ、ヒロトの様子がいつもと違う気がするのは何でだろう?
ヒロトの表情をもっと見たくて、そっと顔を覗きこむ。
「……あの、ヒロが変なこと言って、すみません…」
真っ赤な顔で口元を隠して照れるヒロトがあまりにも可愛く思えてしまって、思わず口元が緩む。
「…かわいいね」
うっかり口から零れたオレの言葉に「先生の方がかわいい!!」と彼らが口を揃えて言うまであと少し。
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