※病人ヒロト×小人リュウジです。
※床下の小人の影響受けてます。











コツリ、と病室に飾ってある花瓶の方から音がする。
これが俺と、彼との合図だった。



「やあ、今日も来てくれたんだね」

「もちろん!今日はとびっきり面白い話を持ってきたからね!!」

ぴょこぴょこと黄緑のポニーテールを揺らして彼は笑う。
いつもなら俺も笑顔で迎えるんだけど、今日はそんな余裕、どこにもなかった。

君に、伝えなきゃならないことがあるんだ。





最初の出会いはそりゃもう、お互いびっくりして、特に彼はとてもとても警戒してた。
だって、彼の身長は俺の手の平ほどしかないのだから。

俺は初めて出会う小人に興味を持たずにはいられなくて、つい「こんにちは、お嬢さん」なんて声を掛けてしまった。
もちろん、彼は激怒してたけど。
そして、警戒する彼から「人間には絶対見られてはいけない」という掟を聞かされたのだった。


「でも、ヒロトに出会って人間は悪い奴ばかりじゃないって分かったんだ」

そう言った彼の顔は希望に満ち溢れていて、きらきら光っていた。
……ああ、死を待つだけの俺とは正反対だ。


それから彼は毎日俺の病室を訪れた。
家に帰らなくてもいいのか、とか、掟を破っても大丈夫なのか、とか尋ねても曖昧に頷くだけ。
俺はそんな彼にきっと甘えていたんだと思う。






「……今度、手術をするんだ」
ぽつりと告げられた俺の言葉に彼は肩を震わせる。

「……しゅじゅつ?」

「うん…。すごく、難しい手術だって医者が言ってた」


俺は小さな彼をじっと見つめて呟いた。

「…ヒロト。また、ここに帰って、来るよね…?」

「……………帰ってこれたら、いいね」


本当は、もう帰って来れないのだと分かっていた。
でも、
それでも、俺は彼の元に帰りたいと強く願っていたのだ。





退屈な毎日を送っていた俺の世界を変えたのは、

彼でした。












人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -