「ヒロト!明日の練習休みだって!」
ノックもなしに勢いよく開け放たれたドアの先にはベットの上に腰掛ける基山ヒロトがいた。
オレは勢いよく開けたドアを静かに閉め、首からかけたタオルで髪の毛をがしがしとふきながらヒロトに近付く。
「…髪くらい乾かしてから来なよ、緑川」
「いや、だってさ、明日の予定は早く知ってた方がいいだろ!?だから急いでヒロトに知らせに来たんだよ!」
そう、オレはお風呂から出てすぐに「明日の練習が休み」だということを知って、すぐヒロトに知らせに来たのだ。
「随分と嬉しそうだね。緑川なら練習が休みになったら悲しむのかと思った」
「そんな大袈裟な! でも、もちろん自主練はするよ!!」
「努力家だね〜 俺も明日やろうかな、自主練」
ヒロトと会話しながら隣に座るとギシリとベットが軋み、2人分の重さが加わる。
お風呂から出てすぐにここに来たから息つく間もなかった。
ヒロトの部屋をぐるりと見回す。相変わらず必要な物以外は何もない感じの、こざっぱりした部屋だ。
実は今夜ヒロトの部屋に来たのは、明日練習が休みになる、と伝える事の他にもう一つ目的があった。
「それで?緑川はいつまで俺の部屋にいるの?」
ヒロトが何か言いたげにこちらを見てくる。
「もちろん、休日前にやることって言ったら、夜更かししかないでしょ!!!」
オレの目的は、ヒロトの部屋にある、サッカーの月刊誌にあった。
これをヒロトと一緒に読んで、お互いの意見を言い合ったり、考えたりしたら新たな必殺技とかできるんじゃないかと考えて、急いでヒロトの部屋まで来たのだ。
「夜更かし…ねぇ」
「うん!ヒロトの部屋にある、あのサッカーの月刊し……………………!?」
とさり、とベットに倒れるオレ。
目を上げて見えるのは、ヒロトの顔と天井だった。
「…………え?」
手首をヒロトにしっかりとホールドされて起き上がろうにも起き上がれない、この状況。
なにがなんだか訳が分からない。
「え?夜更かしってこういう意味でしょ?だめだよ、緑川。恋人の部屋にこんな無防備な格好で来たら。俺、最初にお前が部屋に入ってきた時からずっと我慢してたんだよ?もちろん、責任取ってくれるよね?」
そう一気にまくし立てたヒロトはオレの首筋にそっと息を吹き掛ける。
その中途半端な刺激がオレをその気にさせてくるから質が悪い。
………ああ、必殺技は今日もできない、のか。
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