好きの言い訳






「むー…」

本当に、小さいと思う。
何がって……自分の胸が。

風呂場の脱衣所で自分の胸を見下ろし唸る少女、緑川リュウは悩んでいた。

自分の胸の小ささに。


中学生の頃から少しずつ膨らみ始めて、喜んだのもつかの間、いつしかその成長は微々たるものになっていた。

いつかきっと、掌で掴めば、指の間から肉がはみ出るくらいにはなるんだと思っていたが、現実は厳しかった。
実際に胸を掴んでみるとすっぽりと収まり、隙間ができるほどだ。


「…大きく、なりたいなぁ」

そうしたら、彼は私を「妹として」じゃなく、一人の女として見てくれるだろうか。

はぁ。とまた一つため息が出た時だった。


「いえー、いえー!勝って泣こうぜ〜」


「………はる姉?」

「……っ!リュ、リュウ!?お前いたのか………っ!」

脱衣所に誰もいないと思っていたのか、思いっきり感情を込めて歌っていた、南雲晴。
歌声を聞かれたのが恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にさせている。
…そういう、すぐ照れる所が可愛いよなぁ、晴姉って。
幼い頃から一緒に育ち、何かと面倒をみてくれた。
もはや私にとっては姉みたいなものなのだ。


「リュウ、お前何やってんだよ、そんなとこ突っ立って…」

いそいそと服を脱ぎながらこちらを伺う晴姉。

私はそんな晴姉をじろりと横目で見る。もちろん自分の胸は手で押さえたままで。

服を脱いでしまったら嫌でも分かる、晴姉の胸の大きさ。
揺れたら確実に「ぽよん」とか「たぷん」って音が聞こえそうだ。

「……いいよね、晴姉は」

「…は?何が?」

「………胸、大きくて」

「はあああぁぁぁぁ?何を悩んでるのかと思ったら、そんなことかよ!」

「そんなこと、ってひどい!真剣に悩んでんだよ、こっちは!」

「お前なぁ、胸でかくて良いことなんて一つもねぇぞ?」

「………でも風兄は喜んでるでしょ?」

「……………っ!!!」

すかさず風兄、つまり私の兄的存在で彼や晴姉と同い年である、涼野風介の名前を出すと晴姉は面白いくらい顔を朱に染めた。


「……う、あいつのことなんか知るか!!!」

「まぁた喧嘩したの?風兄と」

と言ってもいつも晴姉が意地を張ってるだけなんだけど。

「だってアイツ、勝手にアイス食った……!ちゃんと名前書いてたのに…!ひどくねぇ!?」


………ほらね。
風兄と晴姉の喧嘩ってだいたいそういう原因で勃発することが多い。


「…せっかく付き合ってるんだから、仲良くしなきゃダメだよ?」

「うううううるさいな! てか、お前は胸のことで悩んでんじゃなかったのかよ!」

「……うっ!」


焦って顔の赤い晴姉は私を指さして声を張り上げる。一方、私はというと忘れかけていた胸のことを思い出して再び気が沈む。


「………だって、大きい方が大人の女として見られるじゃん……」

「…ヒロトに、か?」

「! ちがっ!…わないけど……たぶん…」

「…たぶん?なんだそりゃ??」

「なんかさ、ヒロトって私を妹みたいに見てるとこあるし、少しくらい見返してやりたいなぁ…って……思って…」

なんだか途中で自分が本当にそう思ってるのかどうか自信がなくなってきて、声が段々小さくなる。

何か、しっくりこない。



「…………ぷっ!」

「あ!何笑ってるんだよ!」

「ふはは!わりーわりぃ!…お前、可愛いなぁって思って!」

人が真剣に悩んでるのにこの反応はあんまりだ!
晴姉は目に涙を溜めてひぃひぃ笑う。
私、そんなにおかしなこと言ったかな…?


「お前もさ、自分の気持ちに素直になった方がいいぞ?」

「………"も"?」

晴姉も風兄に素直になるってことかな??

「よし!んじゃあついでに一緒にお風呂入るか!」

パシンッとタオルを肩に掛けて、何一つ隠そうとしない晴姉。
……何て言うか、女だって分かってても、男らしい…!
ガラリと浴場へと続く扉を開けると晴姉はさっさと入ってしまう。
入りながら何か言ってた気がするけど、その言葉は私の耳にはよく聞こえなくて、浴場の湯気のように消えてしまった。






「…早く気付けよな、ヒロトの気持ちに」

「……ん?晴姉、なんか言ったー??」

「…いや、お前の胸も、揉んだらでかくなるんじゃねーかなって」

「揉……っ!?…うーん、でもそれはやってみる価値あるかも……」

「おお、意外とやる気だな!」

「だって、晴姉も風兄に揉んでもらって大きくなったんでしょ?」

「ば………っっ!!? んなわけ、あるかぁぁぁぁ!!!そんなの認めねぇ!絶対に!!」









end



みどりんが胸大きくしようと頑張ってるとこ想像するだけで頭バーンなる\(^O^)/
あとみどりんに晴姉、風兄って呼ばせたかった…!
ヒロトも前までヒロト兄って呼んでたけど「ヒロトって呼んで?」って奴がお願いしたからみどりんは名前で呼んでるよ!…っていうどうでもいい後付け設定^0^←








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