たまには妬いてよ






『…しばらく会っていないが、最近どうだ?』


3ヶ月ぶりにきた、恋人からのメール。
文章にして約2行。
たったこれだけの、メッセージ。

思わず溜め息を吐きながらも相手よりも更に短い文字数で返す。



『…ぼちぼち』


メールを送って、さてレポートの続きでもしようかと思いをめぐらせていると、再びなった携帯電話。
相手はもちろん、さっき突拍子もないメールをいきなり送ってきた奴だ。
久しぶりに交わすメールだが、相変わらず文章に感情がこもっておらず、端から見るとかなりそっけない。
付き合ってはいるが、こういうドライな会話をするのはいつものことなので放っておく。俺は再びパカリと携帯を開いてディスプレイに視線を落とした。



『今日サークルの後輩を家まで送り届けたのだが、彼女に今度から毎日家まで送ってくれとせがまれた。こういう時どうすればいいんだ?』





…開いた口が塞がらないって、こういう事を言うのだろうか。
珍しく長文を送ってきたと思って少し喜んでしまった数分前の自分を殴りたい。全力で。

どうも俺の恋人はこの手の話になると弱いようで、やれ誰かに告白されただの手紙をもらっただのと自分の恋愛に関する相談を、よりによって恋人であるこの俺にしてくるのだ。
俺も曲がりなりにも女な訳で、嫉妬くらいしたりしたが、そろそろこの鈍感な恋人の無神経な恋愛相談にも慣れてきた。


返信ボタンを押していつものように適当な返事を打とうとしたのだが、今日は少しだけ意地悪をしてやろうと途中やめのレポートを放り出して携帯を両手で持ちなおした。




『あっそ。よかったね鬼道クン?…ちなみに俺は一昨日サークルの先輩から告られたけどね』


試行錯誤を繰り返して10分後、完成したのはそっけなくも相手を少し嫉妬させるような内容の文だった。
文章の内容も必ずしも嘘は言っていない。……まぁ、一昨日ってのは嘘で、本当は1週間ほど前だけど。
もちろん、その先輩には悪いが告白されてすぐに丁寧にお断りさせてもらった。
だけど本当に優しくて、少し声の質が鬼道クンに似てたから告られた時はドキリとしたのも事実。



先ほど送ったメールにそっけない恋人が少しでも焦ってくれれば面白いのにな、なんて考えながらようやくレポートに取り掛かろうとパソコンに目を向けた瞬間、再び携帯のサブディスプレイがチカチカと光ってメールの着信を知らせた。
パカリと開いて画面を見れば『鬼道有人』の文字。
あまりにも早い返信に驚きながらもメールの内容に見る。




『今からそっちに行く』



たったそれだけ書かれた文章をじっと見つめる。

………え、なに?今から?
今から、鬼道くんが…来る??


何度もメールを見返してみるけど送られてきた文章は変わらず、俺を焦らせた。
わたわたと周りを見回して大学のプリントだらけの机を整理する。とりあえずまとめたプリントを机の隅に追いやった。

そして申し訳程度に綺麗になった机を見た後、チラリと時計を見る。
鬼道くんのことだからもう出発しているだろう。
あいつは一度こうと決めたら行動が早い。…ほんっと、頭良いくせにこういうとこは一直線ばか。
…まぁ、そういうところが好きなんだけど。


あああ、でもどうしよう。
あんなメール送るんじゃなかった…なんて少し後悔する反面、あの鬼道くんが嫉妬してくれたのかと思うと嬉しいと思ってしまう自分もいる訳で…。




ほんのり頬が熱くなるのを感じながら、やっと手をつけ始めたレポートを恋人が到着するまでに終わらせるのは到底無理そうだった。







end
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ラッドウィンプスの「遠恋」という曲で鬼不をずっと書きたくて、やっと書けました…!
不完全燃焼感はんぱないけど……!
とにかく、すごい可愛くて大好きな曲です〜(^O^)









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