理解できない




※ぐだぐだ長い
※基山さんがおかしい
※変態紳士なヒロト
※緑川ごめん













じりじりと照り付ける太陽。
外では蝉がミンミンと忙しく鳴いている。

午前中にイナズマジャパンでの練習が終わり、オレはようやく部屋で一息つくことができたところだ。
この冷房をガンガンに効かせた部屋で本を読む幸せ…!
今日も練習頑張ってよかったぁ、って思えるんだよなぁ…!


コンコン

そんなオレの至福の時間を壊す音がする。



「緑川、いる?」

……ヒロトだ。
オレと同じく練習を終えたヒロトは膝より少し長めのカーゴパンツと紫のポロシャツに身を包んで、オレの返事も聞かないまま部屋に入ってきた。
いつも練習が終わったあとは大低シャワーを浴びるから、自然と服装はTシャツにハーフパンツというラフな格好になるのだが、今日のヒロトはなんていうか……うん。
オシャレしている、気がする。
たぶん本人に言ったら絶対「そんなことない」って言うんだろうけど、どんな服でも着こなしてしまうヒロトが正直羨ましい。
そう言うオレは白のTシャツに下はジャージなんだけど。

それにしてもヒロトの私服見るの久しぶりだな。


ぼんやりと本を持ってベットに寝そべってたらヒロトが隣に座る。
なんかオレだけ寝てるのも悪いなと思って、オレも起き上がって隣に座り直す。


「…で?どうしたの?ヒロト。珍しく私服じゃん。もしかしてどこか出掛けるの?」

「緑川…」

なんだか妙に真剣な顔をしてオレを見てくる。
…え、なんなのほんと……
なんか、すごく恥ずかしいんですけど…?

「ヒ、ヒロト………?」

ヒロトが一体何をしたいのか分からなくて、でも顔は真剣だし、何か大切な事を伝えられるのかと少し身構える。

「あのさ…」

相変わらず真剣な表情で見つめるヒロト。

「う、うん…?」


どうしたんだろう?
ヒロトがこんな表情するってことは、何かあったんだろうか…?



……ああ、でも、その無駄に整った顔で見つめてくるのは本当に反則だと思う。
…かっこよすぎて直視できないじゃん……
これ、本人に言うと絶対調子に乗るから言わないけどね。


流石に翠色の目に堪えられなくなって目を逸らせば、今度はヒロトの右手がオレの頭に乗せられる。


「…ヒロト……?」

もう本当にヒロトの行動が理解できない。
相手が次に何をするか分からないから、時間の流れが余計にゆっくり感じてしまう。

頭の上に手なんか置いて撫でてるし……

「ヒロト、何が………」

「したいんだよ?」と続くはずだったオレの言葉は、ヒロトの次なる行動によって阻まれた。





ぱさり。

解かれるオレの髪。
重力に従って落ちる髪はオレが思っていたより長くて、ヒロトがその髪を手櫛でさらさらと梳いていく。


「…ねぇ、ヒロトさん?いきなりなんなんですか?何がしたいんですか?」

正面からこんな恥ずかしいことされてるオレの身にもなれよ、ばかヒロト…!
あまりの奇怪行動に思わず敬語になってしまう。
…なんか、昔の上下関係のせいかな、ヒロトのやることに対してあんまり抵抗できない。
ううう、今のオレ、絶対赤くなってる…


「………うん」

オレの下ろした髪をじっくり見たヒロトは納得したように1人頷く。
そしてオレの両肩に手をかけて再び口を開いた。


「俺さ、常々思ってたことがあるんだけど、女の子同士が街で手を繋いでたりするの、見たことあるよね?」

「…はい?」

……ダメだ。
今日のヒロトは全く話が噛み合わない。
そりゃオレたち昔、エイリア学園として宇宙人名乗ってたけど、本当の宇宙人じゃないんだし、そろそろ普通に言葉のキャッチボールがしたい。


「…うん、……それで?」

とりあえず、オレは分からないなりにも先を促す。

「だから俺思ったんだよ。街で俺達が堂々と手を繋ぐ為には、緑川が女装するしかないって」

「…………………」


…この人は、何を言ってるんだ…!?
とてもじゃないけど、昔エイリア学園のトップにいたなんて信じられないよ…

だけど唖然とするオレに気付いているのかいないのか、ヒロトはさっさと話を進める。


「あ、服のことは気にしないでね。瞳子姉さんの昔の服、ちょっと拝借してきたんだ。これを緑川が着て、俺と手を繋いで歩けば、ほら!誰から見ても恋人同士だよ!」


…誰かぁ、この馬鹿につける薬くださぁぁぁい…!
なにが「誰が見ても」だよ!
まずチームメイトにバレるっての!!

しかも、よりによってヒロトが持ってきた瞳子姉さんの服、フリフリのスカートやワンピースばっかだし!!!
嫌だ…!絶対着たくない!!

「お、オレ、絶対着ないから!」

ふるふると下ろされた髪を振るわせて否定すると、どうして?なんて声がする。


「緑川こんなにかわいいのに…………あっ!そうか、そうだよね。緑川1人だけ女装するっていうのが不公平だもんね。なんなら俺もするよ?女装」

「……………え」


まさか恋人がここまで変態だとは思わなかった。
自ら女装を志願してくるなんて!
しかもなんか1人で納得してらっしゃるし!?

オレが心の中でツッコミを入れていると、早々とヒロトの手が瞳子姉さんの服にかけられた。

まさか、本気なのか!?
せっかくヒロトの私服を久しぶりに見ることができて、かっこいいなぁ、なんて改めて思ったのに!
だめ……ダメだよ!


「ヒロトが着るくらいならオレが着る!!!」




気付いたときには口が勝手に動いていた。
ヒロトの口がゆっくりと弧をえがく。

「……そう、なら仕方ないね」



全然残念そうじゃないヒロトがニコニコとそう答える様子を見て、オレは一気に顔が青ざめるのを感じた。


……あれ、オレもしかして嵌められた??


「…男に二言はないよね、緑川?」

「いや、あります。超あります。だからちょっと待っ…!」


笑顔のままオレを押し倒しにかかるヒロトはそれはそれはいい顔をしている。

「え…ちょ、なんで服脱がせてんの!?」

「え?服脱がないと着れないでしょ?瞳子姉さんの服。」


完全にベットの上に押し倒されて、Tシャツも脱がされてしまった。
大してオレが抵抗しなかったのはやっぱ惚れた弱みってヤツかな…
昼間っからヒロトの下で上半身裸とか、なんか変な気分になってくるし…
こんなことなら、早く瞳子姉さんの服を着た方がマシだ…



「………ふむ」

「もう、なにマジマジと見てんだよ!」


上からヒロトに見下ろされて、いたたまれなくなったオレは赤い顔を隠すためにゴロンと横に寝返りを打った。

…いや、正確には寝返りを打とうとしたのだ。


オレの動きはヒロトにあっさりと止められて、文句を言おうとした口を塞がれてしまった。
舌を侵入させようとするヒロトに精一杯抵抗したけど、暖簾に腕押しみたいなもんで、余計に口づけを深くされてしまう。



「…んっ、ふぁ……んんん…っ!」


しつこい位ヒロトの舌で咥内を犯されて、やっと新しい空気を取り入れた時には完全に息が上がっていた。

この部屋、冷房つけてて助かった…!なんて、どうでもいいことが頭に浮かんで、肩で息をしながら、ぼんやりと頭上で満足そうな顔をしている彼を見ていると、またもや爆弾発言をされた。


「…なんか、変な気分になってきちゃった」

「…………ふぇ?」

「最初はね、緑川に女装してもらって一緒に街歩いてデートしたいなって思ってたんだけど、緑川が誘うからなんか我慢できなくなっちゃったじゃないか」

いやいやいや!
オレがいつ誘ったんだよ!?
ヒロトが勝手に欲情しただけじゃん!!

…あ、やばい。なんか涙出てきた。何が悲しくてオレ、昼間からヒロトに襲われてるんだろう。


「…その表情、そそるね」

「…ひええぇぇぇ」

もう、この状態のヒロトに何を言っても無駄だということは過去の経験から嫌というほど知っているのだが、やっぱり抵抗せずにはいられない。

「女装プレイもいいかもね」なんて言う声が頭上から降ってきて、オレはさらに抵抗を強めたけど、紳士の皮を被った変態はそれを許してはくれなかった。




そう、これがオレの女装への大きなトラウマになるなんて、その時はこれっぽっちも思っていなかったのだ。







end






気付いたらこんなに長くなってました。
結局何が書きたかったんだろ…
緑川の女装へのトラウマ話?←






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