今夜は何して遊ぶ?








赤や緑の電飾が鮮やかにならぶ駅前。
俺と南沢さんは今季最大の寒さであろう気温の中、駅前を歩いていた。



今日は恋人たちのクリスマス。
昨日のイブは南沢さん家に泊まってチキンとケーキ食べて、ゲームして、そのあと風呂に入ってたら妙に盛った南沢さんに襲われた。
本当にクリスマスマジックとは恐ろしいもので、俺もいつもは拒むのに思い切り雰囲気に流されて、今思い出すのが恥ずかしいくらいに声も出てしまった。


まったく……少しは俺の身体を労れっての。
ガンガン突いてきやがって……!まだズキズキと痛む腰をさする。
………まぁ、挿れるときにローション使ってくれたのはあの人なりのせめてもの優しさ?だったんだろうけど。





ジロリと横を歩く恋人を睨めば、マフラーを口まで覆って「さみー」なんて呟いている。
本当に、顔だけは無駄に良いというか……。
周囲にいる女の人がチラチラと視線を向けているのが分かって思わず眉間に皺が寄った。


「…ん?なに?俺の顔になんかついてる??」



俺の心情を知ってか知らずか、身を屈めて覗き込んでくる南沢さん。
「周りの女に嫉妬してました」だなんて口が裂けても言えなくて「…なんでもないっス」と言って誤魔化した。


せっかくのクリスマス。
嫉妬というドロドロした感情を持って恋人の横を歩きたくないし。

しかも、クリスマスだというのにやりたいことをイブの内にやってしまった俺たちは、DVDを借りに行こうということになり、今に至っている。



「…南沢さん、DVDは何観たいっスかー?」

「んー…、面白ければ何でも良いんじゃねぇのー?」

俺が至極適当に問えば、あちらからも適当な返事が返ってくる。
はぁー…とため息交じりな息を吐けば、濃い白色が丸くなって空気中に溶けてなくなった。




「………寒いです、南沢さん」

「…言っとくけど最初にDVD観たいって言ったのお前だからな。責任ちゃんと持てよ」

「……だってあのまま家にいたら俺絶対南沢さんに襲われてたし」

「…………」

「…そこで無言にならないでくださいよ」


歩きながら周りに聞こえないよう、ボソボソと会話する。

…そう。DVDを観ようと言ったのは確かに俺の方で、その理由は南沢さんのエロい魔の手から逃れるためであったのだ。
さすがに俺も連日激しいのは嫌だし、それに南沢さんとそういうことばっかりしたくて付き合ってる訳じゃないし。


「……ほんっと、倉間ってガード固いよなぁ」

マフラーをぐいっと下に伸ばして、久々に冷たい空気にさらされた真横を歩く人物の唇は、ぼやくように言い放った。

……はぁ??ガードってんだ、ガードって。
俺は至って普通だろ。南沢さんの認識がおかしいだけだ、絶対。


抗議でもしてやろうかと思って横を向けば、南沢さんの笑い声でしゃべるどころではなくなってしまった。
なに、そんなに変な顔してたか?俺。
……なんかすっげぇ嫌な感じなんだけど。
ものすごい理不尽な気がしてツンと顔を背けて真横に並んでいた南沢さんよりも少し前を歩く。


「…もういいです。南沢さんがなんかめんどくさそうなんで俺が観たいDVD借りてきます」

不機嫌オーラを隠すことなく剥き出しにして言えば、後ろにいるはずの人物は無言で。
人が話し掛けてるのに無視かコノヤロー…。
もういい…。南沢さん置いてきぼりにしてやる…!
無意識の内に歩く速度は早くなって、じわりと目の奥が熱くなってきた、その時。




「…………倉間、」


ぐいっと左の肩を強い力で後ろに引かれた。
驚いた俺は咄嗟に南沢さんの顔を見ようと思ったのだが、その顔は驚くほど近くにきていて、一瞬の内に唇と言葉を奪われてしまった。
そしてすぐに離れた唇。


幸い夜だったのと周りに恋人同士が多かったのとで、さっきのは誰にも見られていないようだった。


「〜〜っ!いきなり何するんすか!!誰かに見られでもしたら……っ!」

「…俺、やっぱ観たいDVDあるわ」

「…………はい?」



唐突すぎる言葉に俺はもう訳が分からないという視線を相手に送ることしかできない。
いきなりキスしてきたかと思ったら観たいDVDがあるとか言うし。
南沢さんの頭の中が見られるのならぜひ見てみたいもんだな。
DVDより俺はそっちの方が見たいかも…なんて。


「…はぁ。それで?南沢さんは何のDVD観たいんですか?」

「恋愛映画。それもとびきり甘いやつ」



そう言った南沢さんはそっと俺の手を握ると、いつもの妖しげな笑みを浮かべていた。
その時の俺はまだ、南沢さんが何故普段あまり観ない恋愛映画を観たがっているのかを知る由もなかった。






クリスマスの夜、恋愛映画を観てまたまた妙に盛った南沢さんに……、以下略。


とにかく、俺はまた恥ずかしい思いをすることになったのだ。
……ちくしょー!






end
――――――――――

去年書きかけて保存ボックスにいれっぱなしだったクリスマス南倉をなんとか完成させてみました……!
文章書けなさすぎて…!
りはびり りはびり……!!



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -