ふと、目を覚ますとぼやけた視界にはっきり映る赤。
だんだん意識がはっきりしてくるとそれがユースタス・キッドのものだと認識する。

人の気配に敏感な己が船員でもない奴相手に眠りこけるなど一体何年ぶりか。


幸せそうな顔をして寝入っているキッドの髪を撫でる。いつもは逆立っている髪だが、寝ている時はちゃんと元に戻るのか。なんて考えながらしばらく撫でていると、ん…と声が漏れた。


「…とら、ふぁるが…?」


寝起きで碌に呂律も回っていないキッドが何故か可愛く見えた。絶対昨日の酒がまだ残ってるんだ、絶対そうだ。と自分に言い聞かすが思ってしまったのは事実。
上半身を起こし、両手で顔を覆う。

もぞもぞと身体を動かすキッドを見ながら1人赤面していた。


「起きるの、早ぇな…」
「お前が遅いんだよ」


バーカ、と頭をはたいてやった。
何か言い返されるかと身構えると、腕をグイッと引っ張られてベッドに逆戻り。離れようともがくがしっかりと腰にまわされた腕のせいで、起き上がれない。


「仕方ねぇだろー…」


まだ意識がふわふわしているのか、間の延びた話し方をするキッド。何が仕方ないのか、ともがきながら耳を傾ける。

すると、次の瞬間ローは一時停止を余儀なくされた。


「お前がいると安心する…」


ピタリ、と動きを止めたローは今の言葉を反復する。


やばい、やばいやばい。今、ものすごく心臓の鼓動が速い。


相手の鼓動を早くするのは得意だが自分の鼓動を早くするのには慣れていない。


ローがピタリと固まり、赤面している中キッド本人は寝る体制に入る。
今の殺し文句を自覚していないのだから質が悪い。だが、わざわざ指摘して恥ずかしがっている自分を晒すのは絶対に嫌だ。




今己の顔が赤いのは、きっと昨日の酒が抜けきっていないからだ。




ローは、自分の顔を隠す様にキッドの胸に顔を押し付けた。



end




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