「…っふ」
「っん…」


くちゅり、と音が鳴った。口を離すと唇は唾液で濡れていて、てかてかしている。口の端から顎を伝った唾液を拭うと、ほわほわしているキラーを見た。何故かこいつはキスをしたあとに周りがほわほわする。…何故だ。


「ぺんぎん」


あ、平仮名発音。若干呂律の回っていない言葉。肩に額をのせてぐりぐりしてくる。髪がくすぐったくて仕方がないがこれはまあ致し方ない。癖の強い猫っ毛というなんともいえない髪質が意外と嫌いじゃなかったりする。
そんなことを考えていると、名前を呼ばれたことを忘れてしまった。何も言わないおれを不審に思ってか、顔あげたキラー。

頬を指で撫でてやると気持ちよさそうにする。猫みたいだ。


「キラー…んっ」


かわいらしいリップ音をたてて一度口づけられたかと思うと、深いものに変わっていった。


「ふぁっ…」


気づいたことがある。キラーは喘ぎやすい。攻めているのは自分のくせに酔ってしまう。戦闘以外にはストイックなためか、こういうのに慣れていないのだろうか。

今もほら、おれを膝にのせてキスを仕掛けているのに合間にもれる声はキラーのもの。


キラーってこんなんだったか?なんて疑問がふと浮かぶ。ストイックで、冷静で、意外と抜けてて、戦闘じゃなかったらほわほわしてて、天然で…って、あれ。
…こんなんだった気がしてきた。


「ぺんぎん」
「どうかしたか?」


もう一度、名前を呼ばれた。今度こそは、…とは意気込んでないが特に長い間を開けずに返した。そのあとにふと、キラーの前髪を分けてみた。すると、潤んでいる瞳と視線があった。その瞬間、もういっかい、なんて唇が動いた。

開かれたキラーの唇は唾液に濡れていて、さっきの声が蘇る。ああもう。なんて思ってすぐ、自分から口づけた。



end



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