8月15日

学生達の夏休みも残り2週間余り。

僕と雲雀くんも、高校生になって初の夏休みを僕らなりに満喫していた。

「本当に君は学校が好きですね」

「そりゃあ、僕の学校だからね」

去年の9月に出逢った僕らは3月にお互いの中学を卒業。
4月には同じ学校の生徒となった。

高校に入学後1週間でまた風紀委員長となった雲雀くん。
同じく生徒会長(代理)となった僕。

そんなわけで、僕らは夏休みとて学校学校の日々。
学校で仕事をして、いつも公園で話して帰るのが日課となっていた。

「それにしても暑いね」

手を太陽に向けて影を作る雲雀くんの頬を汗が流れた。
携帯の画面で時間を確認すると12時28分の文字。

一年で一番暑い時期の、一日で一番暑い時間帯に僕らは公園のブランコに乗っていた。

今日はとにかく天気がいい。
だから余計に日差しが暑くて眩しくて、頭がおかしくなりそうだった。

「そうですね…でも僕は夏が好きですよ?日本は四季が豊かで特に夏は風鈴とか、花火とか…風流ですからね」

「…とか言って、ただ祭が好きなんだろ?」

悪態をつく雲雀くんの足元に、ふと黒猫が擦り寄ってきた。
毎日ここへ来るお陰で懐いた野良猫を雲雀くんは抱き上げて膝に乗せた。

「おやバレてましたか…」

僕をよく理解しているらしい雲雀くんがクスッと笑った。
彼の真っ白なシャツを日差しが照らして、その笑みが輝いてすら見える。

「あの屋台が出てぼんやり光っている感じがいいじゃないですか、浴衣を着るのも見るのも楽しいですし」

「このコスプレマニアめ」

「クフフ、誉め言葉ですね…そうだ、今年は二人で浴衣着て祭に行きましょうよ。確か黒曜の夏祭りは今週末ですから」

雲雀くんと一緒に祭。
慣れない浴衣を着て、いくつも屋台を回って、帰りには少し感傷的な気分にもなって。

我ながらいい考えに自然と顔が緩んだ。

しかしそんな僕とは対照的に雲雀くんは浮かない顔をしていた。

「…行けたらね」

「雲雀くん?」

「でもまぁ…夏は嫌いかな」

どこか突っぱねる様な、ふてぶてしい雲雀くんの言葉が僕には理解できなくて眉を寄せた。

「雲雀、くん…?」

「………」

しかしその空気はすぐにどこかへ消え、雲雀くんはカシャンッと猫と一緒にブランコを立ち上がった。

「何アホ面してるの、行くよ」

クスリと笑った雲雀くんに僕は少し安堵した。






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