こうして骸と雲雀の数奇な入れ替わり体験が始まった訳なのだが、案外骸は冷静だった。
「誰にもバレないようにしなきゃ、あっでも一体どうしたら…!!」
応接室のソファーで頭を抱える自分の姿を、骸はじぃっと見つめ愛らしいと感じた。
勘違いされるなかれ、それは骸がナルシストだからではない。自分だと言うのに、中身が愛しい雲雀故にその一挙一動が愛らしいのだ。
「大体なんで君が並中にいるのさ!!」
「え?いや、それは…」
君に告白しに来ました。なんてこの状況では言えるはずなく。
「無事元に戻ることが出来たらお話ししますよ」
と、ニッコリ笑って見せた。
「〜〜〜っとにかく、君は今日一日絶対応接室から出ないこと!!いいね!?」
「え、君は?」
「僕はいつも通り仕事をするまでだよ」
「おや、それではおかしくありませんか?」
「何が?」
「君の管理下にある並中で、"雲雀恭弥"の僕が応接室に引きこもり"六道骸"の君が仕事をする事が、です」
脚を組みクフフ、と挑発的に笑うと雲雀はピクリと眉を動かした。
にしても、人間中身の性格が変わるだけでこんなにも違う表情が出来るのか。
「突然六道骸が雲雀恭弥の代わりに並中を仕切れば生徒達は動揺し風紀が乱れるとは思いませんか?"六道くん"」
「…要するに何がしたいの、君は」
「並中と黒曜の親睦会、とでも称して僕が君の仕事ぶりを見学しに来たなんて設定はどうでしょう?そうすればお互い目の届く範囲に居れますし、君は僕の姿でさりげなく仕事が出来、僕は君の姿で暇潰しが出来る」
「つまり僕は嫌々君と一日行動を共にするわけか」
「そうすれば元に戻る糸口が見つかるかも知れませんし」
骸は一見合理的な事を言っているが、本当はただ単にこの状況を上手く利用して雲雀と一緒に居ようと言うのが目的だった。
「さぁ、どうします?」
「…しょうがない」
渋々と言った感じで了承した雲雀に、骸はしてやったりと笑って見せた。
「さて行こうか、六道骸」
「その口調やめてくれるかなムカつく」
「クハハハハハッ!これは失礼」
「本当に余計なことしないでよ!!」
こうして、骸と雲雀。
入れ替わった二人(雲雀)の不本意な一日が始まった。
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