最後の8月14日も、相変わらず狂いそうな程の晴天だった。
「あ」
あの日のように、雲雀くんの元から猫が離れていく。
「待って」
それを夢中で追いかける雲雀くんを、僕は黙って追いかけた。
これが、僕の選んだ結末だ。
点滅する信号機の前に雲雀くんが飛び出す直前、
「むく―――」
バッと、彼を押し退けて、僕は赤に変わった横断歩道に飛び込んだ。
驚いた顔の雲雀くんに、笑みを溢して。
その瞬間、
「っっっ!!!!」
トラックにぶち当たった。
でも、全身に激痛を感じたのはたった一瞬で、後は何も感じずただただ世界がスローモーションに見えた。
ふと、雲雀くんと目が合った。
吹き出る自分の血飛沫の色と、雲雀くんの透き通った瞳の色が僕の軋む身体に乱反射する感覚。
もう、僕と君が生き残る結末が無いのなら
せめて僕は…君が生き残る結末を選びます。
自己犠牲など愚かで無駄で偽善者のする事だと思っていた。
でも僕は、君の為なら偽善者にだってなれる。君の為なら死ぬことも出来る。
だからどうか
君だけは生きて。
君の幸せを
僕は祈っています。
大好きです、
雲雀くん
信号機の前では、僕が選んだ結末が気に入らない様子の陽炎が僕を見つめていた。
(ざまぁみろ)
そんな彼にそう、笑って見せたら更に文句ありげな表情をして、陽炎はそのまま消えてしまった。
(ああ、もうこれで全てが終わるのか)
そう思い、僕はスッと目を閉じた。
『終わらないよ』
(え―――?)
そして、雲雀くんの声がした。
最後の最後、目を開けてみれば、雲雀くんが顔に手をやり下を向いているのが見えた。
その、後ろ。
『まだ、終わらない』
―――雲雀くんの姿をした陽炎が嗤ってた。
「!!!!!!」
その瞬間、何かが終わった。
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