土曜の練習後。

自主練を終え、俺は1人更衣室に向かっていた。

この前、何故か俺が小さくなってしまった事件は記憶に新しい。

あのあとしばらく高尾にいじられた挙げ句高尾の家に連れ帰られ世話をされたのが何より屈辱的で忘れられん。

数日で元に戻ったのでよかったものの、もしあのままだったらと思うと………ゾッとする。

無いとは思うが、もう二度とあんなことが起こらないことを願う。

そう思っているうちに更衣室につき、ドアにふれた。

………何故だ。もの凄くイヤな予感がする。

原因はわからんが、とにかくこのドアを開けるととても面倒なことになる気がする。

気のせいだと信じたいが………困ったことにこの手の予感はよく当たるのだ。

しかし、高尾が一足先に練習を切り上げたから更衣室にいる筈だ。

だからきっと気のせいだろう。

意を決してドアを開ける。

………と。

「真ちゃん………」

やはり予想したとおり、いた。

高尾だ。

だが、イヤな予感も当たってしまった。

「どーしよ………





ちっさくなっちった………」

更衣室で真っ先に俺の目に入ったのは………子供になった高尾だった。

「………何を名探偵コ●ンみたいな事になっているのだよ」

「いや 真ちゃんもこの前なってたよね?」

普段の高尾に言われるのもムカつくが、小さい高尾に言われると更にムカつく。

「五月蝿いのだよ で なんでお前は縮んでいる?」

「わかんね 気づいたらちっさくなってた」

少し笑いながらいう高尾はいつもとあまり内面は変わらないようにみえる。

全く、コイツは昔からこうだったのか………

「でもどーしよ コレじゃ帰れないよなぁ…」

ブカブカな袖を持て余しながら俺のほうを高尾は見る。

まさか、俺のウチに来る気か?

確かに俺が小さくなった時は高尾のウチに連れていかれた(というより誘拐に近い)がだからといって俺がコイツの面倒をみる筋合いはない。

と、俺の考えがわかったのか、高尾はいつものようにヘラリと笑った。

「だーいじょぶだって 真ちゃんには迷惑かけねーから」

………む?

表情が心なしか寂しそうに見えるのは俺の気のせい………か?

「そうか なら俺は帰るのだよ ここに長居する必要はない」

高尾ならなんとかできる、そんなことを思ってしまう俺は、無意識のうちに高尾に普段頼っているのだろう。

とにかく、コレ以上ここにいる意味はない。

身支度を整え、俺はドアへと方向転換した。

「………待って」

キュッと小さな音と、それに負けないくらい小さな声が俺の耳に入った。

振り向くと、高尾が俺の服の裾を掴んでいる。

「?どうした?」

「あ…いやっ なんでも…ねーよ」

慌てて服を離し、高尾は取り繕ったように笑った。

なんだ?

「ゴメン真ちゃん 帰っていいよ 俺 平気だからさ」

言葉にこめられていたのは、寂しさだったと思う。

その証拠に、高尾は少し俯いていたからだ。

………ああ、そうか。

確かコイツには、妹がいるといっていた。

きっと昔から我慢することが多かったのだろう。

だから、コイツはこんな小さいときに変な遠慮癖がついた………そういうわけか。

変わらない、と思っていたが、コイツもやはり変わっていたのだ。

今のコイツをやっと理解した俺は、高尾の前にしゃがんだ。

「高尾」

俺にしては珍しく、随分と優しい声がでたと思う。

高尾も不思議そうに俺をみた。

不安で仕方ないというような表情をしている。

なんだ………やはりコイツも、今は子供だったのか。

「高尾 何故お前はいつもそうなのだよ」

「何が…」

「不安なときは俺にも頼れ 相棒……なのだろう?」

高尾の瞳が揺れた。

というより泣いた。

「なっ!泣くんじゃないのだよ!!」

「だ だって 真ちゃ…が……優しっ……」

あまりも急に泣き出すものだからつい抱きしめて高尾の背中をあやすように叩いてしまった。

「ふぇぇ…」

………高尾を不覚にもかわいいなどと思ってしまったことは胸のうちにしまっておく。

「仕方ない 今日くらいはお前のワガママを聞いてやってもいいのだよ 特別に俺のうちに来てもいい」

「いいの!?」

頷けば、ついさっきまで泣いていたとは思えないほどの満面の笑みを高尾はうかべた。

「真ちゃんありがとっ!!
大好きっ!!」

先ほどまでのムリした笑顔とは違う子供らしい笑み。

俺が赤くなっているのはその笑みを見たからであって決して高尾に大好きと言われたからではない。






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「オレの主人は幼気盛り」の数日後から数週間後の話です!

せっかくなんで高尾もショタにしてみました☆

ちなみに幼気盛りと甘えたがり屋の間の話読みたい人とかいます?←
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