「持ってきてあげたよ」
「ひっ……!」
雪子が部屋に足を踏み入れた瞬間、部屋のどこかで引きつった声が聞こえた。なんだろう、とそちらに顔を向ける。
「? あ」
雪子は大人ランボ(冷や汗がハンパない)を数秒見つめると、ふいっと顔を逸らしてテーブルの上に紅茶を並べた。その新しい反応に大人ランボだけでなくツナも首を傾げた。
「「え?」」
「ありがとう! 雪子ちゃん、イーピンちゃん!」
「うん」
「Buyong xie!」
京子とハルの間にイーピンが、ハルとリボーンの間に雪子が座った。ツナは正面に座る雪子に疑問を投げかけた。
「雪子ちゃん……えーっと……大人ランボ、じゃなくて……ホルスタインの人をか、かみ、咬み殺、さなくていいの?(なんか、このセリフ恥ずかしいな……)」
「若きボンゴレ!? なにを言い出すんですか!!」
若干頬を染めながら言うツナとその発言に青ざめて雪子に視線を向ける大人ランボ。だが、雪子は意外にもしれっとした態度で言葉を返した。
「うん。だって一度かみころした相手にキョーミないよ」
「(ガーン)」
「眼中になしっすか!!」
雪子は抹茶のロールケーキをぱくりと口に含んだ。
・・・・・・
・・・・
・・
「モンブランもうめーな」
「よかった」
「イーピンちゃんもどーぞ」
一人一個ずつケーキを食し、感想を短く述べて行く。
「雪子ちゃん、抹茶のロールケーキはどう?」
「うん、おいひーよ」(もぐもぐ)
「イーピンちゃんここのミルフィーユは?」
もぐもぐとミルフィーユを食べていたイーピンの眼から、一筋の雫が光った……。
「泣いてるーーー!!!」
「みんな通る道です」
「やっぱり女の子ねー……」
「ねえ、イーピン一口ちょーだい。抹茶あげるから」
理解できていなかったのはツナだけだった。
イーピンは早口で何か話すと、京子に包みを差し出した。
「なんて?」
「『ケーキのお礼に秘伝の餃子饅を差し上げたい』」
リボーンの通訳にツナは笑った。
「ハハハ、餃子饅は後でいいよ。今はケーキ食べてるんだし」
ツナは至極誠なことを述べていると思っていた。
「「おいしそーっ」」
口を揃えてイーピンから餃子饅を受け取った京子とハルは大きくかぶりついた。
続いて雪子にも餃子饅が渡される。
「ぼくもいいの?」
「Shi wo he ni de peng you de zheng ju」
「『友達の証』」
柄にもなく雪子の眼が輝いた。
「しょうがないね。いただくよ」
「雪子ちゃんまでーー!!!」
2015/12/09