「明るい部屋ですね。昼間みたいだ」

菅野は嬉しそうだ。
深夜のラブホテルに二人で潜り込んで。
入った所は、壁面のライトが真昼の様に明るい部屋。

「色気無い部屋だなー!健全!」
菅野の感想に苦笑する。
全く健全じゃない。
男二人で。
結婚してる男二人でラブホテル。
全然健全じゃないよ、菅野くん。

それに、色気無いのは君だって。
明る過ぎて色気がないのはこの部屋も、君も。
なのにいざはじめると。
急にいやらしくなる。
この部屋も。君もだよ、菅野くん。

菅野はネクタイを緩ませ、上をハンガーに掛けて、ソファに横になった。
テーブルの上のリモコンを手にしてテレビをつける。

杉浦も同じ様に、ネクタイを取り、上はワイシャツだけにした。ハンガーに掛ける。
そのまま風呂へ行き、バスタブに湯を入れる。
出て、持ってきたコンビニの袋からビールを取り出し一本を菅野に渡す。

「ありがとうございます」
ニヤニヤと笑う菅野。
二人で一緒にプルトップを開けると、いい音がした。

杉浦はベッドの端に腰掛けた。
正直もう、ムラムラとしている。
菅野が油断しているからだ。
ソファに寝そべり、お笑い番組を見てケタケタと笑っている。

「かんちゃん」
「はーいー」
「かんちゃん、こっちおいでよ」
「杉浦さんがこっちに来なよ」
言われるままに杉浦は移動する。

菅野が上半身を起こす。
空いた所に杉浦は座る。
ソファに菅野はピッタリと嵌まっていた。
それだけ小さいんだな、と改めて杉浦は思った。
自分はダブルベッドに斜めに寝ても足りないのに。

菅野は甘える様に杉浦の肩にしな垂れかかり、
「かんぱーい。今更ですけど」
と、缶をぶつけた。

大きな目が杉浦を見つめる。
菅野の瞳は茶色い。
そんな色をしているのは、ずっと知らなくて。
何故知らなかったか。
マジマジと見られないから。恥ずかしくて。

ワイシャツの二人がラブホのソファで寄り掛かりながら缶ビール。
「チャンネル変えます?エッチなの」
「ううん、いい。このコンビ好きだよ、面白いよね」
「僕も好きです、このツッコミの方がね!」
「かんちゃんはもっと好き」
「…初めて言われたなぁそれ…僕も杉浦さんが好き、大好きですよ」
「かんちゃんが言うとなんでふざけて聞こえるのかなぁ」
「酷いなソレ。僕ふざけてませんよー」
笑いあう。
缶をテーブルに置いて、キスをする。

しばらくすると風呂から音が聞こえてきた。

「オーバーフローした!」
「風呂だけに」
「杉浦さんそれオヤジっぽい」
「オヤジだもん僕」
二人で風呂へ行く。
扉を開けると、満杯になったバスタブ。

「ここは丁度いいとこで止まらないバスタブなんだね。大きいから二人で入れそうだけど」
「僕らって携帯の次にラブホに詳しいですよね」
「そういうコラボで売れないかな」
服を脱いで、キスをしながら、満杯の湯舟に二人で入る。
月に一度だけの、ラブホ宿泊で、はしゃいでしまう。


20090709完



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