「子供いなくて良かったんですよ。奥さん優しいでしょ」
菅野が杉浦に問い掛ける。
杉浦は頷く。

「うん、優しいよ」
「はっきり言えるなんていいなぁ。うちは妻って言うより、母親だから。子供三人産むと強くなりすぎて困る」
「そーなんだ」
頷きながらも、菅野が羨ましい。
子供は、欲しいと思っていた。
今でも、出来れば。

女ばかりが変わるのでは無いんだろう。
男も、子を持てば「父親」に変わるのではないか。

変化していくのではないだろうか。

「…杉浦さんの事は、それとは関係無いですからね。変な事妄想しないで下さいね」
「しないよ」


昼食を外で。
二人で。
菅野は見かけに依らず、大食漢だ。
一方杉浦は年齢を重ねて、胃が弱ってきている。
一人前を残す時もある。

「今から子供が出来たとして、成人する頃には退職してるんだろうなぁ…って思うと、もう遅いよね」
「そんな事考えてるんですか。セックス出来ないね」
「出来るよ」
なんとなく普通に答えてしまった。

してるじゃないか菅野くん、君と。
子供なんか絶対に出来ないセックスを。
不毛な行為を。

快楽しか考えてないセックスを。

「あー、食ったぁ。杉浦さんは?もういいんですか」
「もういいです。凄いね菅野くん…平らげるとは思わなかった、それ」
「腹苦しいです」
「そりゃそうだろうね」

天麩羅蕎麦とカツカレーの組み合わせに、餡蜜アイスのデザート付き。
テレビにでも出られるんじゃないかと杉浦は思った。


「さぁどうします?このまま営業所に戻りますか?本店寄ってく?」
「なんなら南が丘まで行こうか」
「ドライブですね!賛成です」
「資料とかは?」
「店舗PCに送ってます。こっちは手ぶらでOK」
「了解、出ようか」

二人で立ち上がる。
会計は菅野がまとめた。

外は晴天。
心地好い暑さ。

食べ物やセックスや仕事の事を考えながら、日々が過ぎて行く。


20090706完



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