お構いなくですよ。
僕ら二人で飲んでるので。

お構いなく。
僕の連れはこんな感じなんで。

小さいですよね。
自分では170cmだって言ってますけど。
僕が思うに168cmくらいだと思うんですね。

まあ男なんで、身長は大きく見せたいんだと思います。
ねぇ菅野くん。


「酔ってるでしょう、杉浦さん」
隣で顔色一つ変えずに飲みつづける菅野が尋ねて来る。
杉浦は一時間前からウーロン茶を飲みはじめた。
もう、アルコールを受け付けられない。
「正味3時間ってとこですか、酒飲めるの」
「そうだねぇ。僕弱いねぇ」
「うん、弱いです。僕は強いです」
「かんちゃんは本当にね…どこに入ってるのそれ」
「どこに入ってるんでしょうね。自分でも不思議だなぁ」
その小さく細い体のどこに。
菅野のアルコール摂取量は、感動を通り越して笑える。
9時に飲みはじめ、今は0時。

ウイスキーのボトルは二本目。
顔色も何もかも、変わらない。
水を飲んでいるかのように。

「今日こそかんちゃんに勝ちたかったのになぁ」
悔しい。
酔った菅野を抱き上げて、ベッドに下ろして介抱したかった。
杉浦の妄想。
菅野が嬉しそうに笑う。
「僕も杉浦さんに勝って欲しかったです…今日はもう、杉浦さん、ダメでしょ?」
「…ダメです」
「あは、やっぱり。僕結構期待してたんだけどな」
「ごめん」
「明日、かな?」
「明日は二日酔いだもん確実に」
杉浦がそう言うと、菅野は小声で杉浦を見つめて、言った。
「そんなに僕とセックスしたくないですか」
「そんな事無いよ」
杉浦は慌てて周りを伺う。

五度目の出張先のパブ。カウンター。
スーツなのは杉浦と菅野の二人だけ。
他にいるのは女性客の団体、若いカップル達。それから従業員。

二人の会話を聞いている人物は、いない。

従業員も二人の扱い方を心得ていて、氷と水、それから杉浦のウーロン茶が無くなった時にだけ現れる。

ああ、構わなくていいオーラが出てるんだろうな。僕も。菅野くんからも。

「かんちゃん、今日…頑張ってみよう」
「えー?いいんですよー無理しなくても。まぁ無理させますけど」
「え?」
「杉浦さんが寝ちゃっても僕は勝手にいたずらしてますから」
「ほぼレイプだね…」
「そういうの好きでしょ杉浦さん」
確かに。
自分は菅野に襲われるのが、好きだと思う。

欠伸が出た。

「戻りますか。今日も杉浦さんは負けって事で」
ニヤニヤと菅野が笑う。
「負けたけど…でもかんちゃんを抱っこするよ」
「危ないから嫌ですよ」
ニヤニヤ。菅野は嬉しそうだ。


会計をして、タクシーを拾い、今日の宿のビジネスに向かう。

タクシーの中で、杉浦はうっかり、菅野の膝上に頭を乗せてしまった。
膝枕だなぁ。
かんちゃん細いから痛いなぁ。
そんな事を考えていた。



20090703完



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