さりげなく。
本当にさりげなく、菅野が腕を組んできた。
身長の差があるから、菅野がぶらさがるようになる。
また、動物みたいに思えてきた。
「そうじゃない」
杉浦の自分へのツッコミは、声になっていた。
「どうしました、杉浦さん」
見上げてくる菅野。
「どうしたじゃないよかんちゃん…なんで腕…なんなの」
「なんなのって、恋人同士みたいでかわいいでしょう。って言うか僕ってかわいいでしょう?」
「か、かわ…え?」
可愛いは可愛いんだろう。
確かに可愛い。
だが、それを自分で言うか?
33歳の男が。
33歳既婚で子供が3人もいる男が。
「なんで腕組んでんの…」
「ここだから、誰も見てないしいいでしょ」
営業所内。
杉浦と菅野以外、誰もいない。
いないが。
「なんか恥ずかしいよ」
「恥ずかしくないですよ。くっついていられる。僕幸せ。杉浦さんとくっついてられて幸せ」
「何言ってんのかんちゃん…」
恥ずかしい。
恥ずかしいのだが。
口元が緩んでしまうのは何故だろう。
20090626完
ラフスケッチ