終わった後、先に欠伸をして仮眠を取るのは、菅野だ。

杉浦は興奮して眠れない。
落ち着かない。

菅野の寝息を聞きながら、小さな菅野の大きな態度に感心してしまう。

豪胆。
とでも言うのだろうか。

自分が繊細すぎるのだろうか。

ここがラブホテルとでも言うならともかく、営業所内だ。
マエデン販路部内。

無い。
有り得ない。

来客用のソファーに裸で横たわる菅野。
しかも静かだが、鼾をかいて。
シュール過ぎる絵。

杉浦は丁寧に下半身をティッシュで拭い、更にはタオルで拭い、それでも足らずにウェットティッシュで拭い、拭き取り、大丈夫な物かと考えながら制汗スプレーを遠くから振り掛ける。
上半身はワイシャツとネクタイを取っていない。そのままで行為に及んだ。

菅野は、全裸だ。

得意の全裸。

杉浦はそれを横目にしながら、パンツを履き、スラックスを履き、ため息をついた。

なんなんだこの状況は。
毎回思う。
行為の後の一人反省会。
菅野とのセックスに対する罪悪感は今はもう無い。
営業所内でのセックスが、問題だ。
大問題だ。
何をしてるんだ。何をやっているんだ。

思春期でもこんなには盛ってなかったと思う。
年齢が年齢なのに、中学生レベルの盛り具合。
菅野でさえ30を越えている。
自分は来年、40になる。
何をやってるんだ。
こんな元気があるなら、仕事に集中しろ。
そんなにしたいなら、仕事を片付けてからどこかに行けばいいだけだ。

何も昼から、犬猫みたいに。

馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ。

またため息。

菅野がソファーからズレ落ちそうになるのが見えた。
「うわ、階段踏み外した」
そう言っているのが聞こえた。
寝ぼけているのだろうか。

階段どころか、人として何か色々と踏み外しているような気がする。
それはもう色々と。
色んな事を。

欠伸を噛み殺す。
体も頭も疲労はしているが、どこかで醒めている。

仕事だ。
仕事しないと。
ああ、提出物の催促をしてやらないと。
メールだメール。
文章を考えるのも億劫だ。
仕事しないと。

菅野がくしゃみをした。

裸だからだ。
風邪を引いても僕のせいじゃないからな、かんちゃん。

そう思いながら、杉浦もくしゃみをした。


20090621完




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