本日の業務、終了。

営業所内にはマエデン販路部署の二人だけが残っていた。 

「まっすぐ帰ります?」
菅野がネクタイを解いていた。
杉浦は顔を引き攣らせる。
「なにそれ…なんでネクタイとったの」
「嫌いだからですよ。苦しいもん。どこにも寄らないし」
「う、うん、そうだね。どこにも寄らないよね」
「どこか寄りたいですか杉浦さん」
ニヤニヤと。
何を考えているのか。

「杉浦さん」
「なーに」
「ネクタイってさ」
菅野は自分のネクタイを見て笑う。
「ネクタイってさ、男性って感じしてません?男性器、フロイトっぽい?」
「してないよ。フロイトってそんな事言う人なの?」
「なんでもセックスに還元しちゃう凄い人ですよ」

ああ、そりゃ誰かと一緒だね菅野くん。

「居酒屋」
「ん?飲みに行きます?」
「うん。どっか行くなら」
「僕とセックスは?」
ニヤニヤ。

菅野くんの頭の中はそればっかりなのかな。

杉浦は自分を棚に上げて思う。

「たまには居酒屋デートってのもいいんじゃないかな」
「いいですよー最高です。僕が好きな物は酒、仕事、家庭、セックスと杉浦さん!って言うか杉浦さんとセックス」
「…あ、ありがとう…」

褒められたのか冗談なのか。
とりあえずは感謝の気持ちを伝えた。

「なんで居酒屋?」
菅野に問われる。
少し考えてから、正直に答えた。

「菅野くんがネクタイ外すとさー…今にも額に巻きそうなんだもん。それ想像したら、居酒屋かなーって」
「ネクタイ巻くなんて余裕ですよ。場が盛り上がるなら全裸で酌します」

それも想像してしまって、恥ずかしくなってしまった。


20090617完


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