キラキラの女の子達。
中学生、高校生。若いOL。
雑貨屋の前。

「かわいーなー」
「女子高生が?この青いコアラが?」
「…青いコアラがだよ…」
杉浦は菅野を覗き込む。
菅野はニヤニヤと笑っている。

ぬいぐるみのワゴンを、二人で物色。
「僕が一番可愛いと思いますけどねー」
小声の菅野。
どこからそんな自信が出て来るのだろう。
キラキラしている女子高生より、世界中で人気の青いコアラの宇宙人より、スーツ姿の三十代男性が、可愛いらしい。

その通りなのだけれども。

言い切る自信が凄い、と 感心してしまう。

菅野の顔を見る。

杉浦は、菅野の顔が好きだ。
大きな目、瞳。
整った凛々しい眉。
定位置に正しく収められた各パーツ。
それから口。唇。
小さいのに、笑うと大きく広がる口。
薄い上唇、それよりやや厚くなる下唇。
尖りきらないシャープな顎のライン。
賢そうな額。

「…どこ見てるんですか」
「おでこ。菅野くんのおでこ」
杉浦がそう言うと、菅野は手で額を隠した。
「ハゲてませんから」
「うん、ハゲてないよー。おでこ広くて賢そうだなって思って見てたー」
「お、おんなじ事ですよ」

珍しくうろたえる。
髪の事を言うと、菅野は菅野らしくなく、うろたえる。
だから言わない様にしている。

けれど、賢そうな広い額は、好きだ。

「杉浦さん、菅野さん」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには原田店マストの武藤モコと、同じくQoQoの佐上ヒメの姿。

「まーたサボってぇ、竹中ちゃんに言い付けるよー」
ヒメがからかう。
モコも隣のテナントを指差す。
「用事があるのはこっちじゃないんですか」

雑貨屋の隣の店舗は、携帯電話コーナー。

杉浦と菅野は、競合調査と称して原田店から出て来ていた。
特筆すべき施策も無かったから、隣の雑貨屋も見てしまった。

ヒメがプードルの様なフワフワの髪を膨らませ、笑う。
「スーツの男二人でこんな可愛い店入らないで下さいよー笑っちゃう」
フワフワと笑う。

可愛い女の子、キラキラの女の子。
こういう女性こそ、こんな雑貨屋に似合うんだろう。
杉浦がぼんやりとそんな事を考えていると、脇腹を小突かれた。
菅野に。

笑顔で睨んでいる。

菅野は視線を杉浦からモコとヒメに移した。
「竹中さんと辺見さんはどうですか?」
モコが答える。
「私達が出てくる前に機種変更入ったっぽかったですよ」
「ほー。新規出ないかなー新規」

そんな会話の中、また杉浦はぼんやりと思う。


うんうん、菅野くんが一番可愛いです。
すみませんでした。

キラキラの女子高生より。
フワフワのプードル女子より。
キュンキュンの青いコアラより。

菅野くんが一番可愛いです。

一番キラキラしていて、フワフワしていて、キュンキュンするのは、僕には菅野ヒデキくんだけです。


言葉には絶対にしない。

態度で示せば良いのだと、杉浦は思っている。



20090616完


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