出す物を出し、菅野に対し興味を失ったのか、久保はベッドから離れる。
一人風呂へと向かった。

ベッドの上には安東と菅野だけ。

一人はスーツで。
もう一人は全裸で。

スーツの安東は菅野に覆いかぶさったまま。

菅野は息切れしてきた。
苦しい。
自分も射精してしまいたい。
今日のこの工程を済ませてしまえば、自分達の営業所に戻れる。

杉浦が待っている。
何時までも待っていてくれる。

お帰り、お疲れかんちゃん。
仙台どうだった?
怒られた?
あー、やっぱり。
菅野くんは優秀だからなー。
久保課長とかって怒るの見たことないなー。
安東さんは怒るって言うか、無表情になるよね、考え事してると。

微笑む杉浦。

自分が、こんな事をしているなんて思ってもいないだろう。
思っているのかもしれない。
だが、それは杉浦自身の嫉妬なのだと妄想として排除するのだ。
それが杉浦の思考パターン。

逆手に取っている。

安東の腰が菅野の尻をえぐる。 
菅野の腸内で動くそれは、菅野の内部を崩壊させる。

安東が耳元で囁く。
「誰の事を考えてる?名前を呼んで。早く」
言いたくない、と首を振る。
「ダメです、言わなきゃ。でないと秋田に帰すのは明日になる。さあ菅野くん、誰の事考えてる?」
杉浦さん。
杉浦さん、早く帰りたい。
もうすぐ、こちらを出ます。
早く帰ります。
待っててくださいね。
お願いします。

「…うらさん」
「もう一度言って、菅野くん」
「…杉浦…さ…」
「うん、いいね…その声…」
「杉浦さん…すぎう…らさん…」
菅野のペニスを扱く安東の手の動きが早急になる。

杉浦さん。

解き放った。

安東に犯されながら、菅野は杉浦を思い、果てた。
自分の精子で汚れたシーツの上に腹を付け、力尽きる。
低くなった姿勢のまま、安東は次第に動きを早め、菅野の中で射精した。





「みたいな事を考えてたでしょう?」
言いながら、菅野は杉浦の左の頬をぎゅうーっ、と抓った。
「痛いよ止めてよかんちゃん、考えてないしそんな事!痛い痛いってば」
「一瞬くらいは考えて、でもそんな事ないなーとか思って、けどこれはこれでいいなぁーとか思ってオナニーしたでしょう?」
「痛いから止めてってば、…オナニーまではしてないよー」
「じゃあやっぱり考えてたんですね。僕よっぽど杉浦さんに信用されてないんだな」

菅野が頬から手を離す。
杉浦は左頬を摩った。
痛い。
隣で寝そべる菅野は、菅野の妄想の中と同じく何も着ないで裸のまま。
杉浦も同じく裸で。上半身を傾げ、菅野を覗き込む。

「菅野くんは僕を…妄想キングって言うけどさ、君もかなりだよ」
「違います。きっと杉浦さんはこーゆー事考えて、また僕の事誤解してるんだろうなぁって思っただけですよ。思ったら腹立ってきて、仙台から高速飛ばして来ただけです」
「それこそ被害妄想だよー。僕そこまで考えなかったよ…もしかしたら…くらいで…でもかんちゃんはそんな事しなくたってマネージャーくらいには簡単になれるもん」
「そうですよ!僕出来る奴なんです。体でどうのこうのなんて馬鹿な真似しません。ハイリスクだよ、元手が掛かりすぎてる」

そういう思考回路だよね、君は。
杉浦もベッドに横たわる。
二人で天井を見る。

「…この関係もハイリスクじゃないかな?」
「不倫ですもんね。僕の方がより危険、子供三人抱えて」
「ハイリスクすぎる」
「でもハイリターンです。杉浦さんが手に入るんだから」
ニヤニヤと笑い出した。

この顔。この笑い方。菅野だ。
菅野が今、傍にいる不思議。

「…久保課長と安東さんに失礼だよね僕ら」
「僕は違います、杉浦さんだけですよ失礼なの」
「酷いよかんちゃん。君の方がずっと具体的すぎて怖いよ…ホントに何もないの?具体的すぎて怖い」
「うわーこれだよ…やっぱり信用されてないんですね僕」
「信じてるけど。信じるよ!嘘であって欲しいもん、だって僕嫌だよ、痛いのとか嫌だし久保課長とか安東さんとか、困る!」
「何急に熱くなってんですか。痛いの嫌だとか…その痛いのを僕にしてるんですけど?」
「痛い?まだ痛い?」
「…そんなの聞かないで下さいよ…」

菅野がくっついて来る。
さっきまで冷えていた体は杉浦と同じ体温になっていた。
杉浦は尋ねる。

「なんでさっきずぶ濡れだったの?車で来たのに」
「…中に入るの怖くて外でウロウロしてました」
可愛い所もあるな。
そう思い、菅野の額に自分の額を合わせてみた。

菅野が笑った。



20090615完





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