指先を肛門に当てられる。
体が強張る。
何度もこんな事はしているのに。


杉浦ではないから、嫌だ。


そう頭に浮かんだ時、菅野は久保の股間から顔を離し、ベッドから跳ね起きた。

だがすぐに安東に首を押さえ付けられる。

痩せていると言われる菅野よりも更に骨と皮しか無い様な安東に。

「何でいつも一度は逃げようとするんだろう菅野くんは」
ベッドの上に押さえ付けられて。
安東の無表情な声。
久保が笑い声を上げる。

「菅野くん流エンターテイメントだよ。逃げる動物を追うのは我々が最も楽しみにしている事だからな」
「そんな物ですかね。いいかい菅野くんよく聞いて下さい」
安東は菅野に乗りかかり、耳元で囁く。

「いい加減にしないと、杉浦さんに同じ事をしますよ?君は素直だから可愛がるけれど、杉浦さんにはもっと酷い事をしたって構わないんだ。杉浦さんは君にコンプレックスを持っているから、マネージャーの地位を約束するだけでなんだって出来るでしょうね」
「…嫌だ…嫌です。杉浦さんだけは」
呻く。
泣きそうになる。
杉浦だけは。
自分から杉浦だけは奪わないで欲しい。
他に何も必要ではない。
杉浦だけは。

汚さないでくれ。

安東が微笑む。

「自慢の顔が歪んでるよ菅野くん。わかったでしょう。理解、したよね。なら素直に言う事を聞いて。ね?」

安東は菅野にのしかかった体勢のまま、入口を指で探りあて、ゆっくりと解し、中へと進入させた。

細く長い指。ジワジワと入り込み、動かす。
その度に菅野は小さく声にならない息を吐き出す。
それを見て久保が嬉しそうに呟く。

「本当に、菅野くんは逸材だ。こんな厭らしい表情して。昼はああなのに。この落差が…いい」
突然髪を掴まれて、顎を上げさせられる。
息苦しい。
下から安東の指に責められ、久保には呼吸し辛い体勢にされる。
「菅野くんばかり良くなるのは狡いだろう?こっちにも」
久保のペニスへの奉仕。

これが杉浦さんのなら。
そう思い込もうとするが、形が違いすぎて思い込めない。
仕方なく口づける。
カリが大きすぎる。
全体的に太すぎる。
口内に収まり切れない。
しゃぶるだけになる。

「赤ん坊が舐めてるみたいで可愛らしいな」
久保が何か言っている。
くだらない。
そう思った時、いきなりズルリと安東の指が抜かれた。

声が出た。
小さな絶叫だった。
自分でも驚く程の、厭らしい響きの声。

安東が笑う。
「指を抜いただけでそんな声出されるとは思わなかったな…なら、こっちです」
菅野の腰を両手で押さえ付け、固定する。
外に出されていた勃起した安東のペニスが、菅野の肛門に当てられる。
音も無くそれが侵入して行く。

菅野は呼吸も忘れ、安東と久保のペニスを躯の上下で確認させられた。

嫌だ。
こんなのは嫌なんだ。
杉浦さん。
僕は杉浦さんを守りたいだけなのに。

頭の中には杉浦しか浮かばない。

微笑する穏やかな表情。
抱えきれない劣等感の塊。
優しい空気。
自分には無い全て。
杉浦の全て。

頭と体は一緒の筈なのに。
体を責められると、奴隷として完成しつつある自分も認めてしまいそうになる。
杉浦を思っているのに。

体は、快楽に塗れて、この屈辱さえも耐え切れない程に気持ちがいい。

安東は菅野の奥底まで入り込んでいる。
だが激しく動かす事はせず、ゆっくりと中を楽しむ様に、捩る。
その度に菅野は吐息を漏らすが、久保のペニスをしゃぶる事は忘れない。

どちらも既に、菅野の躯を悦ばせる道具となっていた。

安東が静かに菅野の勃起したペニスを握る。優しく扱く。
久保は菅野に指令を出す。

「もっと激しくしゃぶってくれないかな。菅野くんの口の中に出すよ」
頬張りながら久保の顔を見上げ、目でOKの合図をする。
ディープスロート。
咽に当たり、えづく。
その吐き出しそうな顔、涙目の菅野の表情に久保が燃えるのを菅野は知っていた。

菅野は計算した。
早く自分も出してしまいたい。
気持ち良すぎて頭がおかしくなりそうだ。
久保をいかせて、それから安東のペニスに集中したい。
安東は自称紳士故に、菅野の射精を見届けてからでないと、自分は発射しない。

「ああ…菅野くん、もう少しだ…もうちょっと…」
切な気な声を久保が上げる。
菅野は頭を押さえられた。
吐きそうになる程奥までくわえ込み、舌と咽で久保を攻撃する。

咽が熱を帯びた。
焼け付く様な、熱さと痛み。
久保の精子が菅野の口の中に解き放たれた。
吐き出しそうになるのを我慢し、飲み込む。

「…杉浦くんのと比べると薄いんだろうな」
下卑た笑い声。

確かに杉浦の精子に比べると味も濃度も薄く感じる。
だが、杉浦の物を飲み込んだ事は数える程しか無かった。


  



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