安東が尋ねる。
「久保課長?菅野くんの、どっちがいいですか」
久保は暫く悩み、菅野を眺めて、答えた。
「今日は口かな。菅野くんの、小さいのに笑うと大きく広がる口がね、いいな」

杉浦によく言われる言葉だ。
菅野はそう思いながら、ベッドに俯せになった。

肌寒い。

このホテルの空調はやや寒い。
だがすぐに、そんな事は全く気にはならなくなるだろう。
それに肌寒いのは当たり前だ。
自分はこの部屋に入るなり服を脱いだ。
全裸だ。

それが、久保と安東に会う時の礼装。


久保が菅野の頭側に座る。
やはり全裸で。
ペニスは萎えたままで、だがさすがにそれは年齢のせいなのだろうと菅野は考えていた。
それも、自分がそこに口づければ目を覚ます。
久保が足を開く。
菅野の目の前に久保のペニス。
両手を添えて、萎んだそれを口に含む。
舌で突き、唇で噛み、唾液塗れにする。
睾丸にも同じ様に刺激を与える。
それらの筋を舌先で通り、奥まったアヌスを嘗めると、久保は女の様に声を上げた。
久保のペニスは雄々しくいきり立っていた。
短めだが太い竿。
それを頬張る。

「驚いたな。そんな事も杉浦くんにしてやってるのかい菅野くん」
久保が菅野に尋ねる。
股の間から菅野がペニスから口を離して、久保に笑いかける。
「滅多にしないですよ」
「滅多にね」
久保は笑った。
菅野も小さく微笑み、また「作業」を続ける。

ただ一人、スーツを着たままの安東は思案顔でその様子を眺めていた。

「どうした安東くん」
久保が問い掛けると、安東は本当に困った声で。

「…私が菅野くんを犯すより…この場に杉浦さんを呼んだ方が面白いかな、と思いまして」
びく、と菅野が体を揺らした。
安東はそれを見て、やはり困った様に言う。

「…ね?菅野くんはこの状況を杉浦さんに見て貰った方がきっと感じるんだ」

菅野は作業に没頭しようと更に久保を責め立てる。
その揺れる頭部を愛おしむかのように久保が撫でる。

「あんまり菅野くんを虐めるなよ。可哀相に。御託はいいから安東くんもおいで」
「そうですね…」

安東はスーツのままでベッドに登った。
菅野の後方に座り、その尻を撫でる。
「杉浦さんと我々しか知らないから、綺麗だ」
それを聞き久保が笑う。
「何にしても菅野くんは逸材だよ。安東くん以来だ」
「お褒めに預かり光栄です。私は菅野くん程優秀じゃないですけどね」
「君は手なづけるまで時間が掛かったからねぇ。その点菅野くんは」
久保は執拗に自分のペニスを舌で愛撫する菅野の頭を撫でる。
「素直でいい子だ」

安東がそれを聞き、苦笑する。
「半分脅迫ですけどね。杉浦さんに同じ事するって言ったらコロっと、だもんな菅野くんは。どれだけ杉浦さんに懐いてるかよくわかる。気持ちはわからないでもない。私も杉浦さんは大好きですよ?菅野くん」
そう言って菅野の臀部にキスする。
「杉浦さんしか知らなかったここも、我々に汚されてしまって」

安東は腹這いの菅野の下半身の下に股間から腕を入れ、四つん這いの体勢に変えさせる。
菅野の尻を撫でながら、片方の手を久保へと伸ばす。
久保は枕元のローションを安東に渡した。

それを感じた菅野は、体を強張らせる。

「期待してるのかな。私と杉浦さんを比べないで下さいよ」
スーツは脱がない。
前を降ろし、中の物を出す。
それは既に完全に勃起していた。
杉浦と比べる?
冗談じゃない。
菅野は思った。
「冗談」じゃない。

杉浦が自分に与えてくれる物と、久保や安東が与えてくれる物。
それは全く違う価値。

昇進と金。
それらをこの男達は約束する。
だが杉浦は菅野にそれとは違い過ぎて計り知れない物を菅野にもたらす。

「愛」と言う言葉では陳腐過ぎる。
「癒し」でも充当出来ない。

何にも変えられない「何か」を杉浦は持つ。

だから、離れられない。

体と心は別ではない。
いつも一緒だ。

一緒にある。
杉浦と共にある。

背中が波打つ。
ひんやりとした半液体が菅野の下半身に撫で付けられた。
ローション。安東の指で菅野のペニスとアヌスに塗り付けられる。反応して腰が揺れる。
細く長い安東の指で濡れたペニスを扱かれる。
声が洩れそうになる。

杉浦の名を呼びそうになる。

助けて下さい、杉浦さん。
僕は何かを間違った。
助けてくれ、杉浦さん。
間違ったなら、何度も謝るから。
杉浦さん。

だが快楽には抗えない体になっていた。
それは誰のせいでもない。
菅野自身のせいであり、杉浦から与えられたギフトでもあった。






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