宮川ヒデイチ(22)は、杉浦菅野に最も振り回されている人物だ。

ダメコンビで名高い杉浦菅野には
「宮川くん優秀だからさー、応援部隊には欠かせないんだよねー」
とおだてられ、他店舗に走らされる。

杉浦にいいようにこき使われる。
菅野からはパシリとして重宝がられる。

要は、宮川ヒデイチは杉浦菅野の玩具でありペットなのだ。

ある日。

着信。
菅野の名前。
出る。

「お疲れ様です、本店宮川です」
『お疲れー杉浦です』
菅野さんの番号からだよな?
そう思いながらも返答する。
「お疲れ様です」
『僕ね、そっちに携帯忘れてないかな。私用のなんだけど』
「はぁ、探します」
カウンターに入り、自社のヤード内を探す。
「ありました」
『ゴメン、届けてくれる?何時でもいいよー終わってからでもいーよー。でも早い方がいいなぁ。本店宛ての資料もあるからついでに取りに来てくれたら助かるんだけど』
「わかりました、午後休の時に出ます」
『うんー、お願いねー。あっちょっと菅野くん!菅野くーんかんちゃーん』

ぷっつり。

切られた。

いつもこんな風だ。
バカコンビに巻き込まれて。

5時に休憩を取る。
営業所に向かうと秋山に告げ、店舗を出る。

徒歩。
曇り空。
湿気で蒸し暑い。
スーツは嫌いだ。
杉浦程ではないが、身長のある宮川は細身のスーツが似合っていると菅野に言われる。
襟足長いの許されるのは宮川くんがいい男だからだよ、と杉浦には言われる。

褒められているのではない。

からかわれているのだ。

自分はバカコンビのペットだ。

菅野に翻弄される杉浦のストレス解消用のペット。
業務に追われる菅野の足。

だがこれも仕事の内の一つなのだろう。
諦めた。
可愛がって貰える内が花なのだろうと諦めた。

営業所のあるビルに入る。
エレベーターで8階へ。
営業所前。
磨りガラスのドア。
大きな声。
はしゃぐ菅野の声。

「くーすぐったい!くすぐったい杉浦さん、止めて下さいよー!」
嬉しそうな笑い声。
「菅野くん声大きい、しーっ」
これも嬉しそうな、杉浦の声。
「くすぐったいんですもん、あ、ん…んー」


何をやってるんだ。
仕事しろ仕事。バカコンビ。

宮川は随分前に、バカコンビの正体がバカップルである事に気付いていた。

気付いていたと言うよりも、見てしまった。
キスしている瞬間を目撃し、ラブホテルから二人で出てくる所を目撃し、入る所を目撃し。

他人の性癖は知らない。関係無い。どうでもいい。
どうでもいいが、業務時間内にイチャつくのは止めろバカコンビ。
俺は彼女作る時間も無いんだ。
お前らにこき使われて、遊ぶ時間も無いってのに。
さっさと携帯渡して、資料貰って店舗に戻りたいっての。
杉浦の声が聞こえる。
「かんちゃんの声よく通るから…もうすぐ宮川くん来るよ」
「見付かった時は見付かった時ですって。口封じ。三人で仲良く」
「やだよーやだよ三人なんか、僕興味無いよー」

はい、こっちもゴメンです。

宮川は自分の携帯を取り出して、トイレへ向かう。
メール。菅野へ。

あと2分で着きます。

送信。
即、受信。

(´Д`)ゞ


なんだよこの顔文字。腹立つ。
宮川は襟足をいじりながら、2分間トイレで待機した。



20090612完


ラフスケッチ



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -