お調子者のダメコンビで有名過ぎる杉浦菅野。

基本、杉浦は落ち着いた穏やかな人物で、菅野は明朗快活な仕事の出来る人物だ。

いい組み合わせになるだろう。
そう、周囲は予想していた。

していたのに。
あんなにも落ち着きのあった杉浦が、後輩の菅野に引きずられてしまっている。

元気で明るいのはいい。
いいが。

辺見と竹中は、情けないな、と思っていた。

「ワー、わー、かんちゃん見てコレ!懐かしい機種だなぁコレ」
「わはーホントだ!コレって僕がヘルパーだった時に売った奴ですよ。どこの店舗にあったんだろ!?よく返品かけられなかったなコレ」
「かんちゃんかんちゃん!こっちの!これ!」
「うわっ!レア端末のレアカラー!」
「楽しいね!やっぱ在庫揃うと嬉しいねぇ!」
「売るぞー!って気分になりますもんね!」
倉庫で入荷された商品の確認。
二人は子供の様なはしゃぎっぷりでそれらを手にしては眺め見ている。

辺見ナオコがおずおずと意見した。
「あのぉ…それ、そろそろバックヤードに入れたいんですけど…そろそろ開店ですし…」
竹中も口を出す。
「スギサマもカンカンもこんな時ばっか狡いわよぅ!」
杉浦と菅野が振り返る。
「スギサマとカンカン、今日いいとこ全部持ってっちゃうでしょ?!自由きままに接客して、内容の説明もしないでぇ!そんで自分達が頑張りましたー不振店を救いましたーみたいな報告すんでしょっ!なによぅ、普段は在庫入れて下さいってあれほど頼んでも入れてくれないのにぃ!在庫探してってお願いしても入れてくれないのにぃ!こんな時ばっかりっ」
隣で辺見も激しく頷く。
杉浦が小鼻を掻く。

「在庫はさ、アオイさんに言ってよ」
杉浦が捨てられた犬の様に情けない声を出す。
千田アオイはこのエリアの在庫担当。
「マエデンは売れ売れって言う癖して買い取ってくれないんだよー、僕らのせいじゃないよ」
「そんなの知ってますスギサマ。うちらが売れないから在庫入らないのも!でもね!」
竹中は菅野を見た。
「スギサマカンカンって揃って応援入る時だけ在庫用意するのはヒドイわ!」
激昂する竹中を制する様に、菅野が掌を竹中に向ける。
「竹中さん、売れなくてもいいですよ、今日」
ニヤニヤと笑っている。
「何言ってるのーかんちゃん。今日明日売れないと前年比取れないよー」
「月末までに結果出せればそれでいいんですから、今日明日売れなくたって、構いませんよ。でもね、竹中さん」
「な、なんですかカンカン」
ニヤニヤニヤ。
辺見は嫌な予感がする、とこの場の行く末を見守る。
菅野の宣言。
「この在庫、待ちに待ってた在庫、明日までに売り切れなかったら、戻すんですよ?原田店には置いときません」
「ええええええええー!?」
叫んだのは辺見だった。
「そんなぁー。在庫欲しいですー契約したいですぅ返したくないですぅ。これ無かったらうちの在庫、一桁なんですよぅー」
「泣き言言わないの辺見ちゃん!卑怯よカンカン!不振店だからって酷い!」
「結果が出せないなら意味無いですからね。契約、したいかー?!」
菅野が笑顔で拳を突き出す。
「したいぞー!」
笑顔で杉浦が拳を突き上げる。

バカだ、バカコンビだ。
杉浦は完璧に菅野に引きずられている。
呆れを通り越して怒りが込み上げてくる辺見と竹中。

「はい、2階席ー!」
絶好調。
菅野は笑いながら辺見と竹中に返答を要求する。
「2階席って何よ!バカンカン!!クソー悔しいー!悔しいけど契約はしたいわー!」
「う、売りたいぞぅー。ぜ、全部売り切るぞぅー」
拳を突き上げる、辺見。
「辺見のバカ!バカー!」
菅野は竹中を見上げた。小首を傾げてニタニタ笑顔で要求する。
「はい!竹中さんも!」
「ぐ…う、売るぞー!売るわよ!折角入荷した在庫!ここで全部売り切るわよ、返さないわ!」
「いい心意気だなータケちゃんーいいよーいいよー」
杉浦ののほほんとした声。

ダメだ。
この上司はダメだ。
ダメコンビだ。
辺見と竹中は朝から倉庫で力尽きた。

だがこの日の新規契約数、12件。機種変更8件。
入荷された端末は、完売した。


20090608完


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