徹夜で仕事には慣れた。

今晩の作業は何故か楽しい。

「いいの作りましたよね、僕達!」
「うん、自信作」

シャツの袖を腕捲りしての、特大POP製作。
縦1メートル30、横3メートル。
明日、原田店のエントランス上部に張る。
出力してはテープで繋げる作業。

菅野と二人で徹夜の作業。

「疲れるけど面白いですね。なんか深夜のノリって言うか」
ニコニコしながら菅野が作業を続ける。
杉浦もニコニコしてしまう。
「深夜ノリだね。眠気なんか無いもんね。笑えて来た」
既に25時。
今夜は営業所に泊まり込み。

「いやー、ホントこれイイよね、自画自賛だよ」
杉浦は、完成しつつあるその特大POPを立ち上がり、眺める。

自社の売りである通信料の安さ。
家族間利用でのお得さ。
マエデン購入の場合のポイント付与。
自社CMのキャラクターである大きな白ウサギ。
目立つ特大POP。

発案は菅野。
デザインは杉浦。
製作は共同で。

二人とも、ネクタイは外してデスク上に投げ散らかしている。

仕事モード。
何時まででも行けそうな気がする。
変な気持ちにもなり難い。
杉浦は。

「杉浦さん、終わり何時になりますかね」
菅野は床にしゃがみ込み作業を遂行していたが、手を休めて杉浦を見上げた。
杉浦は立ち上がった状態で特大POPの端の処理をしていた。
菅野を見下ろす。

「何時かな。今何時?1時?じゃああと1時間ってトコじゃないかな」
腕時計を見て。
菅野がニヤニヤしている。
杉浦は口をへの字にした。
「何考えてんのーかんちゃん…」
怖くなる。
菅野のニヤニヤ。
「何も考えてないですよ?」
ニヤニヤ。
「正直に言いなさいかんちゃん。何考えてんの」
見下ろす角度で優位に立ったつもりになる。
だが、それは気のせいだ。

「牛丼とビール買ってきて食って、それから、ねー?」
得意のバンビの上目遣い。
かんちゃん、その技は君だから使えるんだよ。
普通の33歳の男には無理があるんだよ。
かんちゃんだから、許されるんだよ。

「…風呂は?」
「駅前サウナ!」
ニコニコと元気に回答。
出てくる単語に過剰反応してしまう。
菅野くんが言うと、「サウナ」も淫猥だ。

杉浦は諦める。
「じゃあ出来るだけ早く終わらせよう。明日は原田店だよー遠いよー早目に寝ようね?お願いだよ、僕が運転手なんだから」
諦めながらも懇願。
菅野は一層笑顔になる。
「免許証は僕も持ってるんで、安心して下さい」
「かんちゃんの運転は怖いから嫌だよー」

夜が深く更けて行き、終わらない会話が続いて行く。

杉浦は2時以降の自分を想像し、更に明日のシミュレーションをし、疲労が蓄積されているのにも関わらず心が跳ね上がる様に楽しいのを全て、徹夜のせいにした。


20090606完

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