「ちょーこれ凄いしょ」

そう言って岡部が広げたそれは、宮川の目には風呂敷の様に思えた。

「マフラーだってマフラー。ストール?違うなー。ほら、女の子が掛けてる奴あんじゃん、あれ?」
「膝掛け」
「そうそう!それかと思ったんだよね。でもばーちゃんがマフラーだって言うからね、だからこれはマフラー。長いよね。カップル用かな。ばーちゃん勘違いしてんだよね絶対。宮川くんの事彼女かと思ってんだよきっと。遊びに行くんだって行ったらこれ出して来て。編んだんだって。でも悪くないよね。変じゃないよね」
「うん」
「だよね。じゃあはい、片っぽ」

長くて大きくて広い「マフラー」とやらを、岡部は遠慮なく宮川の肩に巻きつけて来た。

内心狼狽えているのだが、きっと自分の顔には表情が浮かんでいないだろう。
ただただ呆然としているだけだ。
リアクションが薄いと誰もに言われ続けて来た。

「あのさ宮川くん。恥ずかしいかもしんねーけどカップル撮り付き合って、ね」
「……いーけど」
「ばーちゃんが彼女だって期待してるからさ。誤解とかないとさ、悪いからさ」

そうして岡部はバタフライを掲げた。

宮川は自分のバタフライを出して、同じ様に掲げる。

身長差。
宮川の方が高い。
見下ろすようにして。

「宮川くんので撮ってくれんの?サンキュー!じゃあ裏ピースで!」

リア充女子か。
思いはしたが口には出さず、インカメラに向かってポーズを取る。

シャッター音。

二人で画像を確認し、バタフライをぶつけあってデータをコピーさせた。

「赤外線なんて無くてもいいけどたまにはあった方がいいよねって思うね」
「Bluetoothなら」
「次のはNFC搭載するかなあ。だったら楽しみだねえ。よっし、どこ行くの?付き合うよ!漫画喫茶?」
「……映画」
「オッケー!えばだねえば!」
「……ちゃんと発音して」
「え、ぶぁー!」

違うが、まあいい。

二人で写った画像を初めて自分のバタフライの中に収めた。
正直映画の内容がちゃんと頭に残るかどうかは、宮川には自信がない。


20121207 完結

拍手コメして下さったPDさん宛てのみやべっち絵に小話付けてみました。

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