恋人同士の日常会話


「……かんちゃんてさ」
「うーい。なんです?」
「君、マリンポロ着てる頃ってどんなだっけ」
「どんなって。着てみりゃいいです?」
「あんの?」
「自分のは返却しましたから、あー、でもどっかにないかなここら辺とか。でなきゃ隣とか。貸して貰おうかな?」
「いやそう言う事じゃなくてさ」
「マリンポロで着衣セックス!」
「違う、違うんだよ菅野くん」
「違うんですー?残念だな。社員と派遣の心温まる純愛AVの撮影なのかと」
「なんだいそれ、そんなの両極じゃないか」
「清純派AV女優みたいなもんですかねー」
「だからね、違うんだよ菅野くん。君が派遣スタッフの頃ってどんな風に売ってたかなって話を……」
「僕ねー、最初から杉浦さんの事とっても好きでしたけどねー、今でも時々思い出すのはねー、杉浦さんはよく僕たちに缶コーヒー奢ってくれました」
「ん、うん?そうだったかな?」
「ええ、秋山さんにワンコイン渡してね、皆でって。ひゃっほう偉い人は気前いいぜーって思ってました」
「そんな事あったかなあ」
「ありました。そうだ、あの頃僕一度、杉浦さんにね、弁当奢って貰いました!そうそう、南ヶ丘に行った時だ」
「あったっけそんな事」
「なんですかもう。僕だけなんですかね覚えてるのって」
「教えてくれたら思い出せるかも」
「山内さんが東京研修行くからって、僕ね、杉浦さんから南ヶ丘に二日入ってって言われました。泊まりですかって聞いたら違うって。でもね、杉浦さんね、送迎してくれるって言ってくれたんですよねー」
「そうだったっけ。でも南ヶ丘に入って貰ったのは思い出せそう」
「もう。なんか虚しいな」
「車の中でどんな話したっけ」
「仕事の話ですよそりゃ。今みたいな感じとは……まあ一緒かなあ。僕がセックスセックス騒がないだけで」
「自覚あるんだねかんちゃん」
「なんにもないのにセックスの話しなんかしませんよ!あの頃は杉浦さんとこうなる事なんて思いもしなかったし。第一僕ってセックス大好きですけど清純派なんでー心と体を開いたらずーっとその話しかしませんけどーそれまでは一切セックスに関する話題なんか出しませんしー」
「かんちゃん今日セックスって何回言った?」
「さあ。なんかまだ言い足りない気がします。セックス!って言ってて気持ちいい言葉ですよねー。サ行が気持ちいいのかな?セックスー!」
「隣に聞こえちゃうよ」
「隣いませんよ?11時くらいから巡店してます。多分原田から南下する感じで。夜まで戻りませんよ」
「ああそうなの」
「なんで知らないんですか。ああ、そんでね、南ヶ丘の初日は杉浦さん、昼まで店にいてくれたんです。隣にスーパーあるでしょ?マエデンはどこも外で食わせてくんないから、昼休の時に二人でスーパー行ってさ、あの時杉浦さんが弁当奢ってくれました!牛丼とサンドイッチとお茶とコーヒー!」
「そんなに食べたのかんちゃん」
「僕がカゴにぽいぽいって入れてたらね、杉浦さんがね、僕からカゴ奪ってね、自分の食べる寿司入れてね、『菅野くんこれ全部今食べんの?どこに入るの?』って笑ってね、んでそのまま会計してくれて。でも僕ホント言うとその他にもおにぎりとゼリーも欲しかったんですよねー」
「ははははは。そうだったんだ。気がきかなくてごめんね」
「ひひひ。思い出してきました?」
「うん、なんとなく。休憩室で二人で食べたよね。食べ終わってから気がついたんだよね僕。一人ずつ休憩に入れば良かったって。どっちか店内に居れば良かったのにって。マエデンからは何も言われなかったけどさ」
「ですよね、僕なんか二日目の昼に気がつきましたよ。南ヶ丘のマストの人に言われて」
「あそこ誰だっけ。松尾さんかな」
「そうそう松尾さんにね。『仲いーんですねー、一緒にご飯食べてたのびっくりした。普通どっちか店内にいるかなって』って。でも僕嬉しかったし楽しかったですよ。煙草二本吸ったら杉浦さんは滝口行ってくるねって行っちゃったけど、帰りはきちんと迎えに来てくれたし」
「そりゃ行くよ」
「帰りも、二日目の行き帰りも、楽しかったですよ。たくさん売ったし気持ち良かった」
「あ、君あの時黒いパーカー羽織ってたね」
「そうです?わかんない覚えてないです」
「着てたよ黒いパーカー。こう、袖口を……なんて言うの?女の子がよくやる」
「ああ、こういうのですね。指先だけ出す感じの。男もやりますよたまにだけど」
「それそれ。女の子みたいだなって思った。でも似合うなって思って、ちょっと羨ましかった」
「羨ましいの?どうしてです?」
「可愛いのって僕みたいなのからしたら少し羨ましかったりするんだよね。僕がしてもけっして女性から可愛いなんて言われないしまず似合わない。君は似合ってた」
「まあ僕ぶりっ子なんでね。ひひひ。直接可愛いって言われたら腹立つんですけど、可愛いって思わせるくらいには狙ってます」
「狙ってるんだ」
「杉浦さんも可愛いのにな。セックスしてる時!」
「何回目?」
「さあ」
「……かんちゃん、最初から?」
「何がです?」
「最初から僕の事好きだったの?」
「ひひひ。気になりますか。そういう所可愛いですよね杉浦さん」
「教えてよかんちゃん」
「はじめて会った時にさ、杉浦さんさ、『僕はヒロキです』って言ったの覚えてます?僕、あの時『この人大好きだ』って思いましたよ。セックスする仲になるとは思ってなかったけどさ」
「僕もおんなじ。あの時、君大笑いしたよね。あの時の顔見たらね、『可愛い子だな』って」
「セックスしたくなった?」
「それはないよ、あの時はさ」
「無かったですよねー。ひひひ。マリンポロ、支店から一着回して貰いましょうか」
「貸してくれるかなあ」
「マリンポロの僕とセックスしてみたいでしょ?」
「……実は僕、数えてたんだよね」
「何回目?」
「今ので12回目」
「1ダース!」


20120827 完結

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