この苦しい気持ちをどうすれば彼に伝えられるのだろう。
杉浦と言う真面目な人間に、自分と言う異分子は、存在出来ないのだろうか。

妻は愛している。
子供達も。

それでいて杉浦は。
離れられない。離れたくない。
優柔不断で何事も先送りにしてしまうような男だ。
なのに。
なのにダメだ。離れられない。

菅野は、一方的に杉浦から別れを告げられてからというもの、気分が滅入っていた。

ここまで自分は杉浦にはまりこんでいたのか。

杉浦は何事も無かった様に毎日を菅野と過ごしている。
その笑顔さえ狡いと感じた。

何も無かった事にする気なのか。
出会わなければ良かったと。
そう言うのか。

腹立たしい。
だが。
恋だ。
自分は杉浦に恋焦がれている。
何が理由だ。
理由など不要だ。
杉浦と共にいたい。
それだけなのに。

上手くは行かない。
そもそも上手く行く筈が無いのだ。
既婚者同士、同性同士。
何が恋だ。

目の前の書類を軽く投げつける。
それを杉浦が見ていた。

「どうしたー?飽きちゃったかい」
暢気な声で。
だがその声さえ好きなのだ。
ああ、自分は負けている。
杉浦に負けているのだ。

「飽きました。外行ってきます。本店見てきますね」
「そうだね。僕も行こうか?」
その台詞にまた負けそうになる。
杉浦は自分の事等なんとも思ってはいないのに。
優しさに、声に、負けそうになる。

「一人でいいですよ。杉浦さんはまだ残ってんでしょ、それ」
「ホント酷いよこの報告書。時間無いよ僕」
苦笑しながら。

菅野と過ごした甘い時間が今は無いのだから、それは言い訳だ。
ダメな男だ。
だから。
だからこそ、目が離せない。

好きだ。
自分は杉浦が好きだ。

外へ出た。
日差しは明るい。
自分の心もいつかは晴れるのだろうか。
菅野は目を細めた。


20100426完


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