ここまで逃げてきた。二人で。
圭となら、どこまでも遠くへ行けると信じていた。
今でも信じている。
どこまでも遠くへ。
誰も行ったことの無い所へ。

「け…」

声をかけようとした瞬間、銃声が響いた。

咄嗟に圭の背を押し、地面に伏せる。

その音に驚いたのか、先ほどの観光客達が叫び声を上げている。
もう一発、同じ方向から弾丸が飛んできた。
目の前の芝がちりちりと焼けた。
明らかに二人が狙われている。

「こな観光客の多いとこで…ようやるわ」

圭が顔を伏せたまま呻く。

二人は一瞬、地を蹴って物陰に身を顰めた。

「誰か判るか?」

依栖が問うと、圭は頷いた。

「あの鈍い銃声。レミントンランドのガバメントやな。タケヒコや。残りの二人も確実に来とるな」
「三人か。ヤバイな。もう囲まれとるな」 
「持ってきとるか?」
「おん」

二人は同時に胸元から銃を出した。
圭は九四式、依栖は44マグナム。

「イトウがアサルトライフル持ってきとるな。ナベに捕まったらしまいやで」
「ブローニングやったか。蜂の巣やな」

もう一発。
二人が隠れる壁スレスレに撃ってくる。

「ほぉ。巧なってんな。当らんけど」

圭が言う。

「感心しとる場合ちゃうで。どっから出る?」
「あっこや」

圭はプールとは反対側の、フィンカ・ビヒア邸の裏手を指した。

「タケヒコは上から撃ってきよる。反対側の家からイトウやろ。ナベが問題やな…下で待たれたらかなんな」
「ほんでも、そこしかないか」
「ないな」

二人は走り出た。
すかさずタケヒコの弾丸が二人の身体をかすめる。
圭が振り返った。
依栖も後を見る。
フィンカ・ビヒア邸の二階の窓から銃を構えるタケヒコが見えた。
圭が九四式から弾丸を放つ。
タケヒコの手からガバメントが落ちる。
タケヒコの「うわ」と小さな叫びが聞こえた。

二人はもう後を振り返らず、ただ走った。



走った。
走る。これからも。
キューバの次は、どこに行けばいいだろう。
どこまで行けば、幸せになれるだろう。
圭がいれば、それでいい。
依栖はひたすら、圭の背中を追い続ける。


20100131加筆修正、完

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