営業所内で抱き合う時、そのスタートの合図は菅野の咳ばらいが、三回。

ケホケホケホ、と空咳が聞こえると、杉浦はパソコンから目を離し、菅野のデスクに目をやる。

すると菅野は当然杉浦を観察していて、ニヤニヤと笑い、
「休憩コース?」

等とほざく。

何が休憩コースだ、僕はかんちゃんの性欲処理の道具じゃないんだ、と頭の中では異論を唱えているが、体は菅野の瞳に釘付けで、正直に反応する。

したい。
したい。
かんちゃんとしたい。
中心に血液が集中するのを感じる。
かんちゃんとセックスしたい。
かんちゃんに舐められたい。
かんちゃんの唇を噛みたい。
かんちゃんの匂いが欲しい。

杉浦の体と頭が真逆に反応する。

いつの間にか背後に忍び寄る菅野にやっと気がつき、座ったままで椅子ごと振り返る。
菅野の顔も見ずに細い体を引き寄せると、菅野は抵抗等一切せずに杉浦に体を預ける。

杉浦の長めの髪を撫でながら、菅野が囁く。

「鍵はしてきましたから」

営業所にはもう「誰もいない」。
状況を作って、戯れる。

日中のセックス。

菅野は杉浦の目を見つめながら、その首にかかるネクタイを解く。

これからの一時間を、休憩コースと呼ぶ。



20090526完



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