「シゲかー、今もまだ市立病院に入院してんのかな」
「本人知ってるの?」
「いや、見たことは無いけど…拓也が話してたのは覚えてる。拓也はここに入院する前に市立病院の精神科にかかってたんだよ。その時に知り合ったらしいんだけど…実際どうなのかな。拓也のあの性格じゃ友達ってもの でもなかったんじゃないかな」
「シゲってどんな子だって言ってた?」
「あはは、それがさ、すっごい美少年なんだってさ。王子様みたいな男の子だってよ。笑っちゃうだろ。そんな子供僕見たこと無いよな。漫画の世界だよ。拓也のロマンチック癖だよ。勝手に夢みてる」
「なんだ、じゃあ勇志さんも知らないんだね、シゲって子の事。でもさ、拓也ちゃんはさ、勇志さんに裏切られたって言ってたよ。どういう意味?」

勇志さんはぎょっと驚いた顔をした。

「僕が拓也を裏切った?どういうことだよ。僕は何にもしてないよ。拓也の妄想だろ」
「ふうぅん。まあどうでもいいけど」

俺の興味は拓也ちゃんからシゲという子供に向かったのだ。
拓也ちゃんとマトモに話し合う事は今は出来ない。
かといって躁相がなくなって鬱相が出たとしたら、もっと会話は出来ない。
また拓也ちゃんを半分怒らせて、シゲと言う子の話を伺ってみよう。

男の子のリストカッター。小学生のリストカッター。会ってみたい。
その子は、拓也ちゃんの婚約者。







 


しかしその数日後には拓也ちゃんは鬱になってしまった。
眠り姫の状態になったのだ。ベッドで寝たきりの十九歳の少年。
これでは「シゲ」の話を聞くことは到底無理だ。俺は諦めようとした。
だが、徹が意外なことを言ったのだ。

「シゲはもう退院してるぜ」

俺は喫煙室のもうもうと煙のたった中であんぐりと大きく口を開けた。
「なんでお前がそんな事知ってんだ」
「従兄弟だから」
「従兄弟ォ!そんな調子のいい話があるかっての。馬鹿にしてるだろ」


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