俺は俺で、入院してから幻聴が激しくなった。
今飲んでいる安定剤との相性が悪いのかもしれない。
最近では神様が一所懸命に拓也ちゃんに近寄るなと言い続けているが、俺は神様の言う事を聞く気は全く無い。

仲良くしようと言っておいて攻撃してくる拓也ちゃんがとっても面白いからだ。
しかし勇志さんは心配している。

また喫煙室での会話。

「最近病棟がうるさいでしょ。拓也が毎日大声で歌ってて、周りも落ち着きないだろ」
「うん、まあね。でも他の患者さんは俺と違って拓也ちゃんのそういうの慣れてるみたいだし、俺は俺で面白いからいいや」
「そんな事言ってるととんでもない事になるぞ。拓也をのさばらしておくのはヤバイ。絶対ヤバイ」
「勇志さん心配しすぎなんじゃないの?拓也ちゃんったって、歌唄って少し喧嘩腰になってるだけじゃない。他にも危険な患者さんもいるでしょ?俺だって一回逃走してる前科あるし、拓也ちゃんなんて可愛いもんだよー。ホント勇志さんて拓也ちゃんの事が怖いんだねぇ」
「怖くは無いよ。嫌なんだよ。嫌いなんだよ。うんざりなんだよ」

意外な勇志さんの言葉に俺は驚いた。温和な勇志さんの言う台詞じゃないと思った。

「拓也が調子に乗ると、俺に被害が来るんだよ。今にいい迷惑かけられるんだ」
「被害妄想だよソレ」
「ヒロキちゃんにはわからないんだよ、しつこく迫ってくる恐怖がさ…」

それは確かにわからない。
俺はゲイだからノンケに迫られる気持ちはわからない(そんなのあったら嬉しいし、好きなタイプなら)。
でも、一瞬カオル兄さんや院長に迫られる自分を想像して、うっと吐き気を催した。
やっぱり俺は性的にはバイは苦手だ。



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